遡行軍のスパイの話 (ページ31)

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31話ページ31

私としては待ち望んでいた水曜日が漸く
やってきた。
本日の出陣のメンバーに鶴丸さん燭台切さんそして一期さんが入っていたことに心の底から安堵する。
鶴丸さんの部屋に居た方が良いと二人が言ってきたが、丁重にお断りさせて頂いた。
最近、鶴丸さんが凄く過保護に感じるのは気のせいではないだろう。
彼を説得するのは大変だったが、私が頑なに断った為、最終的には気をつける様にと私に念を押して出陣していった。

私はイヤホンを耳につけて審神者が出かける素振りを見せるのを押入れの中で待つ。
出陣して数時間後、ようやく審神者に動きがあった。
独り言の内容から、団子屋の看板娘がお目当てらしい。
可愛いやら、話しかけれるかやら言っている。
同じ本丸に痛みに耐えている刀達がいるのに、彼は鼻歌を歌って部屋を後にした。

呑気なものだと、心の中で悪態を吐きながらUSBや必要なものを装備する。

任務開始だ。

私は押入れの壁を押し裏の通路を慎重に進んでいった。
審神者部屋の壁までたどり着き今度はゆっくりと扉を押す。

やはりここも押入れであった。
荷物が少なかったことにホッとし
静かに戸を開ける。

何度も上から見てきたが、この部屋に
足を踏み入れるのは初めてである。

やっと、この部屋に入れた。

部屋の構造はしっかりと頭に叩き込んである。
確かモニターがあるのはこっちの部屋だ。

いつ審神者が戻ってくるか分からない。
私は神経を張り巡らせながら
その部屋に向かった。

襖を開けると大きなスクリーンの隣に黒いパソコンが置かれているのが目に入る。

私は音を立てない様にゆっくりと片手で襖を閉めて素早くパソコンの元へ移動した。
マウスに手をかける。

パッとパスワードの入力画面が映るが、
パスワードは盗聴の際、審神者が口に出しながら入力するのを記憶していた為難なくクリアできた。

あっさりとメニューが表示される。
私はUSBを差し込んでファイルのコピーを
開始した。

膨大な情報が取り込まれていくのを
早く早くと冷や汗を握りながら見つめた。