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7話 ページ7

「し、失礼します!」
大きな声を上げて、
静止の声を背に 私は一目散に駆け出す。


気付く刀は気付くらしい。
彼女に 私はどう見えただろう。
同位体として恥ずかしいとでも思っただろうか。
でも、確かに、私と彼女は違いすぎる。

「ちょっと、待ちなさいよ!」

背後から声が迫ってパシリと腕を掴まれて
止められる。
まさか、追いかけてきたのか?

考えてみれば、彼女と私の練度の差は結構大きいだろう。追いつこうと思えば簡単だ。
でも、そこまでして、何を言いたいんだろうか。


「‥何か」
「ごめんね。私、思ったことすぐに言っちゃう性格で。」

うん。"私"はそうらしいね。
貴女だけじゃないらしいよ。

「大丈夫ですよ。 気にしてません。」

そう言ってやんわりと腕を振り解こうとすると、彼女はバッと顔を上げて
私を真っ直ぐに見つめてきた。

「事情は分からないけど、折角 私達は人の身体を得たんだから正直に、悔いの無いように生きなよ!」

それだけ! といって アッサリと腕を離し
彼女は来た道を引き返していく。

「‥な、にそれ。」

言われた言葉は頭の中でぐるぐると回り、
私は足がすくんで動けなかった。

まるで、全てを見透かしたような言葉。
少しだけ会話しただけで、分かってしまうのは やっぱり彼女も"私"であるからだろうか。

遠くなっていく背中をぼんやり見つめていた私であったが、 いつ間にか 主様が言っていた
集合場所まで戻って来ていて、
どこか心ここにあらずの状態で
近くに配置されてあった ベンチへと腰を下ろしていた。

「正直に、悔いがないように‥‥ー」

あれだけ自由に行動出来たら楽なんだろうな。
そう呟いて、歩いたり、走ったり、 いろんな方達が行き交う 会場を眺めていると、
ふと 視界に 以前も目にした光景を捉えた。

鶴丸さんと 前と同じ"私"が楽しそうに
笑い合ってる姿。
相変わらず楽しそうで、 幸せそうで、
私はドクリドクリと痛む胸を無意識のうちに押さえてしまった。

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あめみや - 急な一期一振に口角が下がりません。ありがとうございました (2月23日 20時) (レス) @page30 id: d39539a2df (このIDを非表示/違反報告)
まかろん(プロフ) - 凄く感動しました、、。 (2020年8月13日 0時) (レス) id: 45c17c16c0 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - すごーくおもしろかったです! (2020年3月28日 10時) (レス) id: f390aacf74 (このIDを非表示/違反報告)
anao10(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れさまでした…!そわそわする展開で毎話毎話じっくりと読み込んでしまいました…笑。次回作品も楽しみです。 (2019年10月24日 0時) (レス) id: 8c68a256f2 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!!作者様の書かれる作品は素敵な物ばかりで、本当に大好きです!!毎回、刀剣男士との距離の描き方が上手で、毎回楽しみに読んでおります!次のお話も楽しみにしてます… (2019年10月22日 23時) (レス) id: 8cdd57f528 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:杏子メロンパン | 作成日時:2019年10月6日 15時

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