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Aside
日曜の午前中。
「……ねむい……」
私はボソッと呟くと、窓辺のカーテンを開ける。
1人暮らしの少し狭い部屋に朝の光が差し込む。
眠い目を洗顔で叩き起こすと、1人分の朝食を作る。
「……」
数か月まで前までは、もう1人分作っていた。
私と、あの人の分。
“大我「A!!」”
「……ふふww」
なんだか懐かしい記憶をふと思い出して、笑みを零した。
あの頃に戻れたらな、なんて思いながら。
私には、数か月前まで付き合っていた恋人がいた。
その人の名前は、京本大我。
綺麗な顔立ちをしていてちょっと抜けているところがあるけど本当に素敵な人だった。
付き合っていた頃は、本当に幸せでいつも笑顔で過ごしていた。
――でも、大我には決まった婚約者がいた。
大我の家は由緒正しい立派な家。
家の家業を継ぐために、昔から婚約を決めていた女性がいるということだった。
それを知ったのは、大我に別れを告げられた時だった。
“大我「……俺だって……Aと別れたくなんかないよ……涙」”
“大我「……Aだけでも、幸せになって涙。」”
お互いに涙ながらに別れたあの日。
大我もずっとその人と結婚することを抗っていたのだが、親の決定でどうすることも出来なかったという。
そして、自分の望まない幸せに生きることになった大我は私だけでも本当の幸せに生きてほしいと願って別れを告げてくれた。
“「……大我、今までありがとう。……さよなら。」”
どうすることも出来なかった私は、涙ながらに今までの感謝と別れだけを口にしてその場を去った。
今思い出せば、本当に後悔しかない別れ方だった。
どうして大我に何も言ってあげられなかったのか。
自分の感情でいっぱいいっぱいになりすぎたのだ。
本当に申し訳なかった。
そんな後悔を胸に秘めて、今の生活を送っている。
大我の婚約者の方は、どんな方なのかは知らないけどとっても素敵な人なんだろう。
……大我が、笑顔でいてくれたらな。
そんなことを思いつつ、ガスコンロに火をつけた。
――ピンポーン。
ふいに、インターホンが鳴った。
こんな時間に誰だろう……?
そう思いつつ、タオルで手を拭くと「はーい」と言ってドアを開いた。
「ぇ、……!?」
大我「…………久し振り、A。」
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作者名:すのうHIINA | 作成日時:2023年3月21日 21時