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きっと誰もが誰かのヒーロー
そんなキャッチコピーを掲げたポスターが、駅近くの柱に大きく飾られている。
なんとも素晴らしい限りだ。ヒーローに心酔した一般人が普通ではないものに憧れ死にゆく。
もちろん、なんのために生きるのか。というものに対して、自分のためだけに生きろ。なんて私は思わないし言わない。
人のために生きるのはいいことだし、人助けも素晴らしいとは思っている。
結局自分のために生きようとしていても、結局は誰かのために生きている。そうしてバランスが保たれているのだから。
だからヒーローを非難するつもりはない。
だけど、人のために命をかけているような人たちを、テレビや雑誌で得た薄っぺらい知識で非難する人間は別だ。
「あーあ、さすがのヒーローもあれは助けれなかったんだなぁ。
なんか期待はずれだわ」
「あのヒーローさっさとやめればいいのに。弱いから人がいっぱい死ぬのよ」
現場を間近で見てもいない人間にはわからない。
どんな絶望的状況下でも、自分の死を恐れずに立ち向かう勇気を。
「ね、所詮ヒーローってそんなものよ」
＿＿
「いやぁ、本当に情報が漏れるのは早い」
携帯につけているイヤホンからは、一時間前に行った事件の模様がニュースで流れていた。
相手が暴れた時についた血痕を隠すように、太陽がガンガン照りの中、暑苦しい長袖のジャンパーのジッパーを首までぎゅっと閉める。
周りにはノーマルヒーローがウロウロしており、どの人も顔は険しい。
それに相対するように、街中に溢れかえっている人は、アイスクリームを食べたり、友達と喋っていたりと呑気な雰囲気を醸し出している。
「ねぇ、これから何処へ行くの？」
握った手は、私よりも強く握り返されている。
その声音はいつもとは変わらないように聞こえる。でも、少しだけ怯えているのがわかる。
「今よりもずっといいところよ」
自身の手汗を気にしながら、私の一回り小さい少年の手を引きながら、人混みに入らないように歩く。
「ねぇ疲れた」
「あぁ、ごめんね」
自分が小さい時、どんなふうに接しられていたのかが思い出せない。
いくら精神科医の勉強をしていても、子供の相手はなかなか難しい。こればかりは経験なのかもしれない。
すぐ近くの木陰に入り、私は鞄の中に入っていたお茶を取り出し、瑞智に手渡した。
「ねぇ、何が食べたい？」
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作者名：くじゅ | 作成日時：2018年6月22日 17時
