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もともとね、運動は苦手なんだ。
走るのも遅いし、
マット運動や、跳び箱、
え？ダンス？無理無理。
リズム感ないもん。
で、中でも1番苦手なのが……水泳。
泳げないんだー私。
泳げないって言うか……浮かない？
私の身体、浮かないの。
体脂肪がないからかなぁ…。なんてね、うふふ。
どうせ貧乳ですよ、バカヤロー。
まぁ、でもさ？
泳げなくたって人生においてなんの支障もないわけよ。生まれて二十数年、なんの不便もなかったわけよ。
確かに夏の体育の成績は散々たるものだったけど……。
今日だって仲良しの同僚とお気に入りの水着を着て海水浴でね？
波打ち際でキャッキャウフフして、大きな浮き輪でプカプカして、イケメングループにナンパされて、
またキャッキャウフフしてね？
泳げなくたって海と夏をちゃーんと謳歌しちゃってたわけよ。
なのに、
楽しい海水浴場が一変、
突然の人々の悲鳴と視線の先に、
かなり沖のほうでバチャバチャと水しぶきを立てる、ちいさな男の子。
あれはもしかしてさっき売店で一緒になった子？
少し話したの。
お父さんとお母さんと妹と4人で来たんだって嬉しそうに話してくれた。元気でかわいい子。
もう一度言うけど、私泳げないの。
なのに頭で考えるより先に身体が動いてた。
後ろで同僚が叫んでたけど、
私の身体はまっすぐ、男の子へと進んでた。
「A！！あんた！泳げないでしょ！！」
そうなんだよねぇ。
泳げないんだよねぇ私。
とりあえず男の子の所へ行って、男の子を抱えて、
ありゃ？このあとどーすればいいんだ？
って、やっと気付いた時にはもう足は付かなくて。
でもこの子は助けなきゃって。
泣きじゃくる男の子を必死でなだめて、とにかく岸へと水をかいた。
もう少し、もう少し……
レスキューの人の黄色と赤色が駆けつけてくるのが見えて、
助かった……
そう思ったけど……
男の子が助けられたのを見た瞬間、
遠のく意識……
あ、私死ぬな。
って、なんかそう確信した。
あー、やばいなぁ。
予約してたアルバム、明日届くのに。
秋のライブ……行きたかったなぁ。
あー、死ぬのかァ私。
死ぬなら、
最後に一度だけでも……
おみに会いたかったなぁ。
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作者名：kyle
| 作成日時：2018年3月11日 11時
