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車での移動中、陣痛の間隔はとうとう５分を切ってしまった。
到着後すぐに車椅子に運ばれて、そのまま３０分もしないうちに分娩室に運ばれてしまった私は、立ち合い出産もままならないほどのスピードで出産を終えてしまった。
多分これは安産というやつなんだろうと、ぼんやり考えていたら、お腹の上に生まれたばかりの赤ちゃんを乗せられて我に返った。
「はじめまして」
声に出して挨拶してみる。
赤ちゃんは顔を真っ赤にして泣いていたけど、私の声を聞いてピタリと泣き止んだ。
まだ目も見えてないはずなのに、じっと声のする方を見てるこの子を見て驚いた。
うわ…、渉さんにそっくりなんですけど！
生まれた瞬間から小難しい顔をしてるこの子を、
私は渉さんだと思って大事に大事に愛を注ぎまくって育てようと、この瞬間に固く誓った。
遠慮がちに分娩室に入ってきた彼は、私の顔を見てホッとしたような微笑みを見せたあと、腕に抱かれた赤ちゃんに視線を落とした。
最初は固い表情で赤ちゃんを見ていた彼は、ほろほろと溶けるように表情を崩していく。
「なんか…、もしかして俺に似てる？」
看護師さんに手渡されて、慣れない手つきで赤ちゃんを抱きながら、しばらくじっと眺めていたけれど、ふと我に返ったように、
「A、ご苦労様
本当にありがとう」
と、他人行儀なお礼を言うと、また赤ちゃんに視線を戻した。
「性別、聞いちゃった？」
「聞いたよ、男の子だって」
「ショックじゃなかった？」
「正直、病院に着いてから、無事に生まれてくれれば性別なんてどっちでもいいと思ってたから
何とも思わなかった」
本当に？
でも彼の表情が、それを真実だと物語っていた。
私を見る時と同じように愛に満ちた目をして、腕の中の赤ちゃんを眺めていたから。
日付が変わってすぐの深夜に生まれてきたその子は、本当に予定日ちょうどに産まれてきた。
病室に戻れたのは、もう朝方近い時間だったけど、疲れてるはずなのに私は全然眠れないでいた。
感動とか興奮とかいろんな感情が入り混じって、目が冴えて仕方なかった。
彼も同じような感じで、消灯された病室の中で、ソファーベッドとベッド越しにずっと会話を続ける。
「渉さんに謝らなきゃいけないことがあるんだけど」
「…何？」
「実は私、エコーで男の子だとわかってんだよね」
返事の代わりにため息が聞こえてきて、
「言えばよかったのに」
って言われたけど、言えるわけないじゃん！
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まいまい(プロフ) - 読了しました…感動です。最後まで魅力的なお話でした。書いていただいてありがとうございました！！また他の作品も読んでみたいです。 (2021年5月6日 23時) (
レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - かばえさん» 今まで読んでいただいてありがとうございました。玉担さんだったんですね！また何かしら書きますので、その時はよろしくお願いします。 (2021年3月8日 16時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - かみりーなさん» 読んでいただいてありがとうございました。かなり重めな感じに仕上がってましたよねｗまた何か書いていきますので、その時はよろしくお願いします。 (2021年3月8日 16時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
かばえ(プロフ) - マーマレードものすごく素敵なお話でした。ドキドキハラハラキュンと読んでいて楽しかったです。マーマレード完結で寂しくなるけど次回作も楽しみにしています。玉担ですがマーマレードの渉さん大好きでした。 (2021年3月7日 10時) (レス) id: ee5b6d6ece (このIDを非表示/違反報告)
かみりーな(プロフ) - 完結おめでとうございます。そして素敵な物語をありがとうございます。マーマレード渉さんの重ーい愛が新鮮で大好きでした！他の作品も楽しみにしています！ (2021年3月5日 22時) (レス) id: 1856802e71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りたわかめ
| 作成日時：2021年1月2日 23時
