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「私、渉さんの携帯番号知らないし
だから、渉さんも私の番号知らないんじゃないかな」

そんな私の答えに、2人は無言で驚いてたけど。

特に意味はないんだ。

番号を交換する機会がなかったのと、会社も家も同じだから別に不便はない。









東京駅まで太輔に送ってもらって、普通列車でのんびりと箱根へ向かう。

「よかったの?若葉
せっかくの休みなのに」

「だってA様が1人きりで薄暗いビジネスホテルとかで新年を迎える姿を想像したら、泣けてきますもん
今夜は温泉に浸かって、美味いものを食べて、朝まで飲みまくりましょう!」

「ごめんね、若葉
もう私、横尾家の人間じゃなくなっちゃうけど、それでも仲良くしてくれる?」

けっこう本気で言ってるのに、若葉をそっぽを向いて、

「当たり前じゃないですか
その時はもう、敬語は使いませんけどね」

とか言ってくる。

こんな年の瀬に、1人じゃなくてよかった。

この結婚の一番の収穫は若葉なんじゃないかな。









その夜は、朝方まで若葉と飲み明かした。

仲居さんに叩き起こされて、2人して無言で二日酔い状態の朝ごはん。

「帰国予定は5日でしたよね?
それまでどうします?」

改めてそう聞かれるけど、さっきから頭が痛くて何も考えられないんだよね。

「…漫画喫茶とか?」

ぼそっと思いついたことを言っただけなのに、若葉は鬼の形相で睨みつけてくる。

「A様は何も悪いことをしてないのに、何でそんな犯罪者みたいなことをなさる必要があるんですか?」

「そうだけど
今は身を隠さなきゃいけないんだし
それに、なんか楽しくない?
あ、若葉はもう帰っていいからね」

もうこうなったら、一人旅を満喫してみるのもいいかも。

幸いなことに、キャリーケースの中には旅行の支度が整ってるし。

「帰りませんよ、私は
最後までA様について行きますから」

「だって若葉は長期休暇中なのに」

「いいんです
今はプライベートで、不甲斐ないA様に付き合って差し上げてるんです」

って、本当に若葉は口が悪い。







だけど、急に若葉のスマホが鳴り始め、

ディスプレイを見た若葉は表情を固くしてしまった。

「どうしましょう、渉様から電話です」

私もその画面を覗き込んでみる。

「国際電話?」

「わかりません
きっと、A様の居場所を聞かれると思うんですけど」

「…そんなの、出なきゃいいじゃん」

私は強引に若葉のスマホを取り上げて、そのまま電源を落とした。

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まいまい(プロフ) - あー、面白すぎます!!今頃この作品に気づきました。渉さんが愛に気づくことが出来ますように。こういうストーリーに入り込んだのは初めてです。とても面白くて、大好きなお話です。 (2021年5月4日 7時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - keitoさん» 確かに!なんかその2人、しっくりきますよね!言われてみればって感じで納得です! (2018年12月20日 13時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - saryuさん» はじめまして。コメントありがとうございました。今のところ毎日更新ですが、いつ止まっちゃうかわかんないんで、ちょっとドキドキしながら書いてます(/ω\) (2018年12月20日 13時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
keito(プロフ) - 好きすぎて実写化するならば…と、役者を思い浮かべてます。まずは主人公ちゃん。ガッキー、はるさん…うーん。なんて考えてたらシリアスなシーンでサスペンスかよってつっこんでしまいました。緩急が心地いい(*´ω`*) (2018年12月19日 11時) (レス) id: 91adf91c90 (このIDを非表示/違反報告)
saryu(プロフ) - はじめまして、毎日ワクワクしながら更新待ってます。 (2018年12月19日 1時) (レス) id: 1be03817b0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2018年11月16日 8時

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