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私達には共通の話題がない。

だから車内でも気まずい沈黙が流れてしまう。

まず私達はお互いのことを知らない。

彼はその調査書とやらで、私のことを少しは知ってるかもしれないけど。

仕事の話をしたくても、仕事のことに立ち入ってはいけないことになってるし。

まあ、彼はさっきから新聞に目を通してるから、話しかける隙もないけど。

車はすぐに会社に着き、何故か彼は研究室の前まで私を送り届けてから、

「今日は遅くなるから、先に寝てていいよ」

そう言って、私の頬を撫でた。

だからそれって、誰に見せてるの?

本当はこんなことしたくもないくせに。

だってさっき私に触れた指は、とても強張っていて冷たかった。

遠ざかっていく背中を見送りながら、なんだか泣きたくなった。

やっぱりよくないよ、こういう結婚は。









自分の席に着いた途端に、太輔はさりげなく隣に座ってくる。

「旦那さん、いい人なんじゃない?」

「何の話?」

「ここまで送り届けてくれるとかさ
土曜の夜も、俺がAの部屋のインターホンを押したら、すぐに出てきてくれたし」

…そうだった!

すっかり忘れてたよ。

私にはその時の記憶が一切ないんだってこと。

「ねえ、その話、詳しく聞きたいんだけど
今夜、暇?」

「空いてるけど…、いいの?
新婚なのに夜に出かけるとか」

太輔は珍しく、窘めるように眉をひそめた。

「今夜は遅くなるみたいだから、大丈夫」

どうせ私が何をして何時に帰ってこようが、彼には全く興味ないだろうから。









「で?詳しく教えて」

席に着いてすぐ、私は太輔に詰め寄った。

「何が聞きたいわけ?」

「全部だよ、全部」

太輔は呆れ顔で、タブレットで勝手に注文をし始める。

「俺もそんなに長居したわけじゃないし
すぐに帰ったから」

「いいから、順を追って聞かせて」

「Aはタクシーの中でずっと泣いてて、マンションに着いてもずっと泣いてた
最上階のフロアについても全然泣き止まなくて、とりあえずインターホンを押したらすぐに旦那さんが出てきてくれた」

「それで?」

「丁寧にお礼を言われて、玄関に座り込んじゃったAを2人で支えながら、寝室に運んだんだけど…
てか、予想以上にすごい家だったわ、Aの新居」

「それだけ?
私、変なこと言っててなかった?」

「とにかく、ずっと泣いてたから
あ…、「あんな家、帰りたくない」とかは言ってたかも」

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まいまい(プロフ) - あー、面白すぎます!!今頃この作品に気づきました。渉さんが愛に気づくことが出来ますように。こういうストーリーに入り込んだのは初めてです。とても面白くて、大好きなお話です。 (2021年5月4日 7時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - keitoさん» 確かに!なんかその2人、しっくりきますよね!言われてみればって感じで納得です! (2018年12月20日 13時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - saryuさん» はじめまして。コメントありがとうございました。今のところ毎日更新ですが、いつ止まっちゃうかわかんないんで、ちょっとドキドキしながら書いてます(/ω\) (2018年12月20日 13時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
keito(プロフ) - 好きすぎて実写化するならば…と、役者を思い浮かべてます。まずは主人公ちゃん。ガッキー、はるさん…うーん。なんて考えてたらシリアスなシーンでサスペンスかよってつっこんでしまいました。緩急が心地いい(*´ω`*) (2018年12月19日 11時) (レス) id: 91adf91c90 (このIDを非表示/違反報告)
saryu(プロフ) - はじめまして、毎日ワクワクしながら更新待ってます。 (2018年12月19日 1時) (レス) id: 1be03817b0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2018年11月16日 8時

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