片想いされています！！【星乃一歌】

近付いた距離 (一歌side) ページ18

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「一歌、練習お疲れ様！前よりすごく上手になってるね！」

「そうかな……？なら良かったよ。ありがとうA！」


難しかったギターのフレーズをどうにか弾き終えて、Aが渡してくれたペットボトルをぐいっと飲み干す。


個人練習の日にAを家に招くようになってから、Aは私に打ち解けてくれたのかな……何だか前より柔らかく接してくれるようになった感じがして、ついつい頬が綻んでしまった。


「一歌、最近は一生懸命練習してるね！」

「もちろんだよ。志歩にちゃんと出来るとこ見せなきゃだしね……」

「そうだよね……それにしても、一歌が挙動不審じゃなくなったのちょっと違和感あるな〜」

「えっ？……もう、これくらい一緒にいたら流石に慣れるってば」



……今私は、Aに大きな嘘をついた。


Aの近くにいる事に慣れたのはあるけど……表に出ていないだけであって、私の気持ちは何一つ変わっていないんだから。

Aを見ただけで胸がときめくのは変わらない。
その姿をついつい目で追ってしまうのも変わらない。

今だってこんなにドキドキしてて、心臓がうるさいくらい拍動してるのに……


あのキス未遂の一件から私は、Aへの煩悩をすべて払って練習に打ち込み、この気持ちの逃げ道をどうにか作っているのだ。

抑えられなくて爆発するより、どこかにガス抜きできるような穴がないと……どうしてもAを求めてしまうから。


「……でも、ちょっと寂しいかも」

「…えっ？」

「いや、せっかく一歌の家にお邪魔してるんだから、たまには私にも構ってねってこと！」

「っ…そっか、ごめんね。見てるだけじゃ暇だよね？」

「あ、違う違う！一歌の顔きれいだから見てて飽きないし大丈夫！」

「……！？」

「ふふっ、顔真っ赤」

「か、からかわないでよ……」


Aのこういう小悪魔みたいな仕草には本当に悩まされる。

最近は私の気持ちを知ってるうえでからかってるみたいな事が多くなって……正直、私の心を弄ばないでほしい。
どうしても勘違いしてしまうから。
恋人になってくれるんじゃないかと、期待してしまうから。


「一歌」

「……うん？」

「がんばってね、絶対」


私にそう言ってくるAの目は、次のライブの応援とは別の意味も含んでるような感じで……私ははっきりと決意を固めた。


「失敗なんてするわけないよ」


私にしては強気な言葉である。

だって、本気だもん……貴女の心を、勝ち取るために。


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