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しみこむ ページ30

1つの傘に入って歩くと距離は縮んで、肩と肩が自然に触れ合う。
今はこのくらいの距離が物凄く安心した。
優しくぶつかるこの距離が。


雨は強く傘を打ち付けるけど、その音が心の中で響き渡る声を描き消してくれている。


家の前に着くとベクは立ち止まって私を見た。
このあとの選択は私に任せる、と言われている気がした。


控えめにベクの袖を引っ張り歩くとなんの抵抗も無くベクも歩いた。
一緒にエレベーターに乗り込み部屋の前に辿り着くまで一言も言葉を交わすこともない。


鍵を開けてドアノブに手をかけたところで動きが止まった。


本当にこのまま進んで良いのか、今更になって怖くなった。
傷付くのはベクだって分かってるのに、このまま進むつもり?


「大丈夫ですよ。俺は先輩が望むことしかしない」


その声に顔を上げると、ベクは優しく微笑んでいた。
勿体無い。
純粋にそう思った。


私にはあまりにも勿体無い人。
どうして私なんだろう。


そう思っても、今の私はベクから離れる事が出来なかった。
臆病なくせに欲張りだ。


部屋にベクがいることが不思議で仕方が無い。
いつもの部屋なのに全然違う場所にいるみたいな気分だ。


「何があったかは聞かない方が良いですか?」


床に座っているベクに冷たいお茶を渡したのと同時に聞かれた。


いっそのことすべて話してしまいたかった。
でもこれは、ミンソクさんとあの人の問題で私が勝手に話していいことでは無いんだ。


「じゃあ聞きません」


何も言ってないのにベクは私の顔を見ただけで分かってしまったようでお茶をひと口飲んでグラスをテーブルに置くと自分の隣をぽんぽんっと叩くので戸惑いながらも隣に腰掛けた。


「顔見ない方がきっと話しやすいでしょ、先輩は」


「…本当にベクは私のことなんでも知ってる」


前と比べたら平気だけど今でも人の目を見て話すのは少し苦手だった。
高校の頃は本当に目を合わせて話すことなんて無いに等しかったくらい。


「だってずっと先輩のこと見てたから」


きっと私は、ベクみたいになりたかったんだ。
ベクみたいに自分の素直な気持ちを言えるようになりたかった。


今の私は優しくて暖かい言葉は躊躇うくせに、人を傷つける冷たい言葉はハッキリと言ってしまう。
これじゃあベクと真逆だ。


「ほんと…情けないや」


こんな私を大切にしてくれる人を大切にしたい。
そんな想いが内側でどんどん大きくなっていった。

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K(プロフ) - ソルさん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます(;_;)ミンソクさん派も多いのですね!どちらとのハッピーエンドなのか、楽しんで読んでもらえると幸いです(^_^) (2018年5月24日 20時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - ゆなさん» ベクペンさんなのですね!私なら選べないです、どちらとも幸せになりたいです...笑 (2018年5月24日 20時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - きらさん» こんばんは!わー、ミンソクさん派!ベク派が多いと思ってたのでなんだか嬉しいです(>_<)どちらとも幸せになれれば良いのに...と作者なのに悶々としてます笑 (2018年5月24日 20時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
ソル(プロフ) - いつも楽しく拝見してます!ミンソクさんとハッピーになってもらいたいなって思いますっ! (2018年5月20日 23時) (レス) id: 0f050d23ca (このIDを非表示/違反報告)
ゆな(プロフ) - ベクペンだけど、選べません(笑) (2018年5月20日 4時) (レス) id: 2f6c46c71c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:K | 作成日時:2018年3月15日 18時

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