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鍵を返したついでに聞いてみても良いだろうか。
仕事終わりに聞いても良いけど流れ的にはきっと今が良いはず。
「そうそう、ミンソクさん。貸してくれたスウェット、女物でしたよね?それにシャンプーとコンディショナーも!」
「ん?あぁ、そうですね」
そうですねって…なんかもうちょっと無いの?
少なくとも動揺はしていないように見える。
「それに合鍵も!一人暮らしで合鍵持ってることなくないですか?ミンソクさんやっぱり本当は彼女さんいるんじゃないですか〜?」
自分が出せる限りのにやにやを前面に押し出して問いかけると、ミンソクさんは吹き出した。
「スウェットとシャンプーとコンディショナーは妹のですよ」
「へ?あ、あぁ!妹さん!?」
「まぁ合鍵は前の彼女が使ってたやつですけど」
上げて落とすんですね。
いや、予想はしてましたけど。
元カノの存在くらいで落ち込むなんてどうかしてるよ、ミンソクさんに今までに合鍵を渡すような存在がいなかったなんてそんなはずないのに。
でも恋をするととても欲張りになるんだ。
どんどん私も、私もって…欲の塊がドロドロと渦巻く。
「あ、じゃあアレも妹さんのだ!ピアス!」
「え?ピアス?」
「はい、テレビの横にピアスが置いてありましたよ〜」
そう言うとミンソクさんは急に神妙な面持ちになった。
え、何?急にどうしたの…?
「えと…もしかして、妹さんのじゃ無いんですか?」
「いや、たぶん妹のです。教えておかないとだなぁ」
口の端をきゅっと上げて笑うその顔が、私には嘘にしか見えなかった。
そしてその言葉もきっと嘘。
「ふうん、妹さんの」
わざとらしく信じていないと言っているような返事を返したけれどミンソクさんはそんな簡単な罠に引っ掛かるような人では無いのでこれ以上話題は膨らまなかった。
妹さんのピアスじゃないのなら、元カノ?
でももしそうならそう言っても良いのでは?
合鍵は元カノだってあっさり言ったのだからあのピアスだって元カノが忘れていったものだと言えば良いのでは?
でも、綺麗好きできっちりとした性格のミンソクさんがあの場所にあるピアスに気が付かないことってある?
当たり前のようにテレビ台には埃一つ無かった。
でもミンソクさんはあのピアスの存在に気付いていなかった。
じゃあ、あのピアスは最近のもの?
胸の奥がズキンと疼いた。
ああ、やっぱりミンソクさんには女の人がすぐそばにいるんだな。
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K(プロフ) - さえさん» そう言っていただけるととても嬉しいです(;_;)コメントもたくさんくださって本当に力になっています!ありがとうございます!! (2018年3月15日 18時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - グロリオサさん» 他の作品も読んで下さっているんですね、ありがとうございます…!ありがたいうえに私には勿体無い言葉ですがとても嬉しいです!これからもよろしくお願いします(^^) (2018年3月15日 18時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
さえ(プロフ) - 暗いとか思ったことないです!切なさもあり心温まるストーリーを書かれるkさんの言葉の紡ぎ方がとても大好きです!更新楽しみにしてます(^ ^) (2018年3月14日 0時) (レス) id: 74d5d29218 (このIDを非表示/違反報告)
グロリオサ(プロフ) - Kさんが書くお話はどれも切なくてハラハラしながら時間を忘れて読んでしまいます。いつも素敵なお話をありがとうございます。 (2018年3月13日 17時) (レス) id: e0624b2322 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - ケイカさん» コメントありがとうございます!私にはもったいないお言葉…(;_;)もう少しお話は続きますのでこれからもよろしくお願いします! (2018年3月13日 7時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:K | 作成日時:2018年1月31日 22時