甘え ページ20
月曜仕事に行くのがひどく憂鬱だった。
その理由は言うまでもなくベク。
話というのはいつどこでどんなふうにされるのだろうか。
それはどんな顔をして聞くのが正解なのだろうか。
私の心配はよそにベクはいつも通り明るく挨拶をしていつも通りなんともない話をして笑っているだけ。
そんな日が続きとうとう何も無いまま1週間が終わろうとしていた。
ほっとしている自分と、もうひとつの気持ちに気付かないふりをしている自分。
このまま動かずに何かが変わっていくのを黙って見ているのも何も変わらない毎日を過ごして行くのも違う気がするのに自分からは何も出来ない。
「Aさん」
ハッとして顔を上げると着替え終わったミンソクさんが眉間に皺を寄せていた。
もしかすると傍にいることに暫く気が付いていなかったのかもしれない。
「すみません、ぼうっとしてました!帰りましょうか」
「今日研修があるので真っ直ぐ帰れないんです。なので1人になっちゃいますけど気を付けて帰ってください」
ああ、そういえば前にそんな事を言っていた気がする。
仕事が終わったあとに研修に行かないといけないなんて大変だなぁ…
「1人でもちゃんと帰れますよ〜!研修頑張ってくださいね!じゃあお先に失礼します」
何か言いたげな表情を隠しきれないままお疲れ様でしたと声を掛け私を見送るミンソクさんに笑顔を見せた。
あまり心配というか気遣いさせてしまうのは申し訳ないというかなんというか。
はあっと溜め息を吐き出して歩き出した時に後ろからドアが開いた音が聞こえたので振り返ると、ベクがいた。
「先輩、このあと予定あったりします?」
なんの前置きもなく出てきたその言葉はずっと口元に潜ませていたのではないかと思うくらい前のめりで一瞬反応が遅れた。
ベクは真剣な表情でじっと私の目を見て答えを待っている。
「…ううん、何も無いよ」
「じゃあ少し時間もらっても良いですか?」
「うん」
薄く微笑むとベクも微笑んだ。
駄目だなぁ、ベクと2人になると昔の私が顔を出してしまう。
もう私は変わったのに。
あの時とは違うのに。
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K(プロフ) - さえさん» そう言っていただけるととても嬉しいです(;_;)コメントもたくさんくださって本当に力になっています!ありがとうございます!! (2018年3月15日 18時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - グロリオサさん» 他の作品も読んで下さっているんですね、ありがとうございます…!ありがたいうえに私には勿体無い言葉ですがとても嬉しいです!これからもよろしくお願いします(^^) (2018年3月15日 18時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
さえ(プロフ) - 暗いとか思ったことないです!切なさもあり心温まるストーリーを書かれるkさんの言葉の紡ぎ方がとても大好きです!更新楽しみにしてます(^ ^) (2018年3月14日 0時) (レス) id: 74d5d29218 (このIDを非表示/違反報告)
グロリオサ(プロフ) - Kさんが書くお話はどれも切なくてハラハラしながら時間を忘れて読んでしまいます。いつも素敵なお話をありがとうございます。 (2018年3月13日 17時) (レス) id: e0624b2322 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - ケイカさん» コメントありがとうございます!私にはもったいないお言葉…(;_;)もう少しお話は続きますのでこれからもよろしくお願いします! (2018年3月13日 7時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:K | 作成日時:2018年1月31日 22時