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お手洗いを済ませ、元の場所へと戻る途中で聞き覚えのある声に一瞬動きが止まった。
驚き、それと動揺。
慌ててその場から離れようと走った時に角から現れた女の人とぶつかってしまった。
「ごめんなさい!」
「いえ、こちらこそ」
慌てて謝ってすぐに足を進めると引き止める声に足を止めた。
振り返るとマスクをした女の人がいる。
首を傾げて何の用か聞こうとした時、女の人がマスクを下げた。
そしてその顔を見た途端、血の気が引いた。
「A先輩?ですよね?」
風邪を引いているのか声が枯れている。
声が違う上にマスクをして顔が隠れていたので全然気が付かなかった。
それに先に聞こえてきた声に気を取られていて目だけで判断する余裕は無かったんだ。
「…うん、久しぶり」
自分の声は笑ってしまいそうになるくらい弱々しくて、そして消えてしまいそうだった。
今の私を知っている人が見たら驚くだろう。
「元気でしたか?」
「うん、まぁ…」
「A先輩、全然変わらないですね!」
その言葉に居心地が悪くなり視線を落とした。
ベクには変わりましたねと言われた。
でも、この子には変わらないですねと言われる。
「まさかこんなところで会うとは思ってなかったですね、あんな最後だったしもう会うことも無いと思ってました」
恐る恐る顔を上げると微笑んでいた。
それは会いたくなかったと捉えるべき、だよね?
「あの、私…」
「Aさん」
なんとか振り絞った声は別の声に遮られた。
2人が顔を向けた先にいたのは、ミンソクさん。
「なかなか戻ってこないから心配になったんだけど…お友達ですか?」
「すみませんお邪魔してましたよね!?どうぞごゆっくり!」
そう言って私たちに頭を下げると小走りで消えていった。
どうやら彼氏か何かと勘違いされたようだった。
「すみません、高校の頃の後輩と偶然会って立ち話してたんですよ!わざわざありがとうございます」
「高校?じゃあベッキョニの友達とか?」
「そうなりますね」
ふうん、と相槌を打ってからマジマジと見つめてくるので目を逸らした。
「さっきの後輩のこと苦手なんですか?」
「そう見えましたか?」
「見えました」
どうやら会話の一部始終を見られていたらしい。
それなら仕方が無い。
「苦手なんじゃなくて、罪悪感ですね」
ミンソクさんは意味がわからなかったのだろう、首を傾げた。
それ以上は何も言わず、微笑んでみんなの元へと戻った。
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K(プロフ) - さえさん» そう言っていただけるととても嬉しいです(;_;)コメントもたくさんくださって本当に力になっています!ありがとうございます!! (2018年3月15日 18時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - グロリオサさん» 他の作品も読んで下さっているんですね、ありがとうございます…!ありがたいうえに私には勿体無い言葉ですがとても嬉しいです!これからもよろしくお願いします(^^) (2018年3月15日 18時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
さえ(プロフ) - 暗いとか思ったことないです!切なさもあり心温まるストーリーを書かれるkさんの言葉の紡ぎ方がとても大好きです!更新楽しみにしてます(^ ^) (2018年3月14日 0時) (レス) id: 74d5d29218 (このIDを非表示/違反報告)
グロリオサ(プロフ) - Kさんが書くお話はどれも切なくてハラハラしながら時間を忘れて読んでしまいます。いつも素敵なお話をありがとうございます。 (2018年3月13日 17時) (レス) id: e0624b2322 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - ケイカさん» コメントありがとうございます!私にはもったいないお言葉…(;_;)もう少しお話は続きますのでこれからもよろしくお願いします! (2018年3月13日 7時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:K | 作成日時:2018年1月31日 22時