XXV ページ25
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「──ぇ、あ」
振り返れば、濃い葉巻とムスクの香りが身を包む。
二年前より少しシンプルになった服装を眺め、やはり肩にかけられたコートの大きさに胸を打たれ──私を射抜く琥珀色に、キュッと唇を引き結ぶ。息を吸い、震えながら口を開く。どうしてと問えば笑いが返った。
「所有物を取りに戻るのは、おかしい事か」
「……置いていったくせに」
「壊れちまったら困るだろうが」
「か、代わりなんて、いくらでもいるでしょう」
冷徹に私を見下ろす視線の鋭さは相変わらずだ。どころか前よりキツくなっている気もしなくはない。
喜びは勿論ある。しかし悲哀も多くある。涙が視界をぼやかしていく。
「どうして、きたの」
「アァ”?」
「何も見ないようにしていたのよ。何も聞かずにいたの、もし居場所でも知ってしまおうものなら、きっと追いかけてしまうからって」
「……」
「どうして……どうして? なぜ来てくれたの。これじゃあ私、私」
忘れられなくなる。捨てられなくなる。
辛かったのだ。ずっと叶わなくてもいいと思っていたのに、離れてみたらこのザマだ。寂しかった。苦しかった。会いたくて仕方なかった。触れて欲しくて毎晩泣いた。──そんな日々に、疲れていた。
傍に居られるだけで幸せだった。確かに、それは真実だったのだ。
「死にたいか」
「……叶うなら、あなたに、殺されたいわ」
「他には」
「他?」
「無いとは言わせねェぞ」
「ッ、……」
「吐け」
涙が零れ落ちた。
「……………………隣に、いたいの」
ぽろぽろ、ぽろぽろ。雫は留まることを知らずに落ち続けていく。視界が不明瞭で彼の顔が見えないことが救いだった。
一度口にしてしまえば止められないと思っていた。その推測はやはり正しかった。
「戦えもしないし、仕事の手伝いもできないし、何か秀でたものがあるわけでもないけど、それでも、あなたが好きなの。愛しているの。隣に、いたいの」
「……」
「それが駄目だと言うのなら、今、ここで殺して。私の最後はあなたがいい。このまま寂しく生きるくらいなら、あなたを愛したまま死にたいの、……お願い……」
このまま、孤独に溺れてしまう前に。
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おはよ - めっちゃ面白い作品でした！最高です (2023年3月20日 22時) (
レス) @page44 id: d4f6705fb9 (このIDを非表示/違反報告)
白鯨(プロフ) - みうしさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます! 私としましてもまだ書きたいものが幾つかありますので、またぼちぼち気まぐれに更新しようかと思います。何卒気長にお待ちください。 (2022年11月13日 23時) (レス) @page32 id: 7a595430fd (このIDを非表示/違反報告)
みうし(プロフ) - 大好きな作品が終わってしまって寂しい〜〜泣泣と思っていたら番外編も書いてくださるんですか😭😭是非読みたいです……！！ (2022年11月12日 8時) (レス) id: f1ae5cae79 (このIDを非表示/違反報告)
愛ってなんや？ - 面白いです！！続き待機してます！！ (2022年10月23日 14時) (レス) @page19 id: 027cc676f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白鯨 | 作成日時：2022年5月25日 10時
