陰キャ娘ちゃん実は【wrwrd！】

お隣さん ページ37

大家さんストーカー事件のあと、
親から引っ越しをすすめられた。

正直あのアパートにも思い入れは少しあった、
けれどあの時の恐怖心の方が強く
結局高校周辺のアパートへ引っ越した。
大家さんは親の知り合いらしく安心だ。



引っ越し作業は親も手伝ってくれ、
荷ほどきも終わりようやく落ち着いた。

「あ、お隣さんに挨拶しなきゃ」

親にもらった挨拶用の手提げ袋を片手に
チャイムを鳴らした。

「はーい」という声と共にガチャとドアが開く。

「新聞なら結構で…ってあれ」

ドアから出てきたのはひとらんらん君だった。そういえば一人暮らしなんだっけ。

スラッとした長身とマスク、
制服ではなくラフなスウェット姿。

突然のことに驚いたがひとまず挨拶を。

「隣に引っ越してきました、
えっえっとよろしくお願いします…！
あとこれつまらないものですが……！」

スッと持っていた手提げ袋を渡すと
ひとらんらん君はマスクをグッとおろし、

「ん、ありがとう、よろしくね」

とはにかむように笑った。

ひとらんらん君は
いつもマスクで口元が見えない(らしい)

表情が読めない上に寡黙で
あまり友達ともつるまないタイプだとか。
(とか言いつつ私は彼の笑顔を見た)

口元を見れるなんてそうそうないんじゃない…？
ちょっとだけドキドキして顔が見れない。
私がまごついていると、思いついたように


「あ、ちょっと待ってて」

そう言うと部屋の奥へ。
数分後ビニール袋片手に戻ってきた。

「これうちで作った野菜、
お近づきの印にあげるよ」


ビニール袋には大量の野菜がはいっていた。
青々としてどれも美味しそうだ。

家庭菜園かな？
それにしては立派で普通に売り物に見える。

受け取るとひとらんらん君はまた
嬉しそうに目元を緩め、「じゃあね」とドアを閉めた。


素敵な隣人さんができました。
ちなみに野菜はとっても美味しかったです

＊


(……緊張した)

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