◆狼種の少年 １ ページ29
？「来い……！」
振りほどいた手を、彼が再び取る。痛いほどの力で、手首を握られて引かれる。
どうして？ どうして私に拘るの？
私を置いていけば、確実とまではいかずとも逃げられる確率はかなり上がるはずなのに。
どうして足手まといにしかならない私を無理やり連れて行こうとするのだろう。
身代金狙いの誘拐？
だとしても、失敗しては元も子もない。屋敷の者に見つかってしまった段階で、彼は諦めるべきだ。
『諦めなさいよ……っ！』
？「うるさい……！」
彼は私の手を離すことなく、もう片手に武器を構える。
あくまで、徹底抗戦しようっていうの？
馬鹿だ。勝ち目など、あるはずがない。ここは、私の家の敷地だ。そして、追手はその家の人間。地の利でも、人数でも、彼にとって有利な点なんて何一つない。
『……っ、もう！』
目の前の彼が、自棄になったように武器を構えるのを見てしまうと、我慢できなくなった。彼は死ぬ気だ。死んでも構わないと思っている。周囲に敵しかいない現状で、戦う意志を見せるなんて正気の沙汰じゃない。
……っ！
『……こっちよ！』
？「……！！」
決断は一瞬。私は彼に手を取られたまま走り出す。最初逃げられたのかと、私を引き戻そうとした彼も、私が向かった先が追手が来るのとは別の方向であることを知って、そのままついてきてくれた。
……よかった。
そのままあの場に留まって、彼が追手と戦うことを選んでいたら、全面衝突は避けられなかった。
そんなの、見たくない……。
彼が死ぬところも、身内の誰かが彼を殺してしまうかもしれない光景も、見たくないと思ってしまったのだ。
次の角を左に曲がり、噴水の向かいの小道へと飛び込む。そのまま一気に迷路を駆け抜けて。
『ほら、行って……！ 早くしないと皆も庭を抜けてきちゃうわ！ 今なら逃げられるでしょ！』
？「……ッ！」
普通に考えてくれれば、これ以上私を引っ張り回すことに意味がないことはわかるはずだ。追手が迷路仕立ての庭を抜け出してくるまでまだ少し時間がかかるだろう。ここから先は私という案内人も必要ないし、彼一人で逃げた方がよほど有利だ。
『早く行って！ 死にたくなんかないでしょ！？』
？「……別に。」
『え……？』
あっさりとした彼の無感情な言葉に、呆気にとられてしまった。
死んでも構わないってこと？
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フフカ - はい!まってます今日もご苦労様でした。(^∀^#← (2016年4月13日 5時) (
レス) id: eace5f3fac (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - ありがとうございます！ そうです、前とは少し内容を変えて書いてみました！！ よくわかりましたね(^○^) これからも頑張りますので楽しみにしていてください！！！ (2016年4月12日 22時) (レス) id: 23fff2c30d (このIDを非表示/違反報告)
フフカ - こんなに遅くからご苦労様です なんとなく今日も来ちゃいました!似ている小説だけど前とは違うので読んでます前より詳しく書いてあるのでとても分かりやすいです(#°∀°♭ 明日もまってまーす(笑) (2016年4月11日 22時) (レス) id: eace5f3fac (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - ありがとうございます！ 頑張ります(^○^) (2016年4月10日 20時) (レス) id: 23fff2c30d (このIDを非表示/違反報告)
フフカ - 分かりましたありがとうございます誰オチにするか決まったら教えてください これからも毎日応援してます!!ガンバﾃﾞｽ (2016年4月10日 19時) (レス) id: eace5f3fac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヒメア | 作成日時：2016年3月9日 20時
