コーヒー時々オムライス

10 ページ9

「あと・・・外では部長は辞めてくれないかな」

「え？」

「余計怪しまれる」


その言葉に
自分の顔が火照っていくのがわかる

「すいません・・・」

「いや、プライベートだからさ、一応」

「すいません」


「ほら、すぐ謝る。
まずは、Aのその悪い癖、直さなきゃなぁ」

「直したほうがいいですか？」

一口ずつカクテルが
グラスから、私の体内へと移していくたびに、
私の身体は火照りだす

前回、部長にごちそうしていただいた時は
こんなことは無かった

というか
私、いつから女の機能を封印しているんだろう

「うーん、たぶんさ、自分でも直すことできなさそうだし」

「・・・」

「そんな心配そうな顔するなって・・・」


そう言って

そっと私の耳もとに近づき
聞いたことのない重低音のウィスパーボイスが響き
私のお腹の奥でキュっと軽く疼く


「俺が治してやるよ」


私から離れた部長の顔は
今までに見たことがない男の顏だった


身体が熱く火照る


部長は、私の手を握ったまま

私の顔を覗き込むように話す


「もう1杯飲む？」


「いえ・・・」

たぶん、これ以上飲んだら
今日はアブナイ

適度に気持ちいいくらいがちょうどいい


「そ？あ、明日のこと考えてる？」


「え・・まぁ」


的外れな質問に私も合わせる


「いつからだろうなぁ、
若い時はさ、明日のことなんか考えずにさ
飲み明かしてたのに」

「そうなんですか？
私のイメージでは、ぶちょ・・
あ、いえ、櫻井さんはそんな明日のことを考えずに
飲んでるのかと」


「あははは、結構考えるよ、
特に、今の立場になったら、余計
こう見えてもさ、大変なんだよ」


そう言って笑う


「そうなんですか？
私には余裕すら見えます」


「ないない、だって考えて見て？
同期からも、上からも微妙な立場だよ、俺」


・・・

確かに、
誰よりも若くして昇進していけば、
それだけ気を遣うことも多いかもしれない


「・・・あと1杯つきあってよ」

「え？」


そう言って
握ってる手をキュっと強く力をいれられる


「もう少しだけ飲みたい気分だから、
あ、Aは、軽めのカクテルにしておこう・・・
どんな感じのがいい？」

「じゃあ、さっぱりした感じの」


「甘くなくていいの？」


そう言って笑う


「あ・・・すいません
また、私かわいげがなくて」


「あはは、いいんだよ
それで、かわいさをわざわざアピールしてくる子より
ずっとAがの方がかわいい」

11→←8

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す