コーヒー時々オムライス

45 ページ44

私は
コーヒーを片手に
こそっとビルの裏口から入る

出るときは手ぶらだから、
何も無かったかのように正面から出たけれど
さすがに、コーヒーを片手に戻ったら、

いかにも
「私サボってます」

と言っているようなものだ

しかも、
裏口から入ると

入ってすぐに、
非常用の扉があり、
そこを開けると
業者用のエレベーターが設置されているので

わたしは、
そのエレベーターを使って、上に上がる


正面のメインエレベータと違って、
寒々しいつくりの内部


私は、どんどんと光る数字をボーっとみていた


そして、やがて、ゆっくりとフロアに止まる

ここまでくれば、
また、再び非常用の扉を開けて
廊下を歩き
何気なく、デスクについたら、
誰にもも怪しまれずに業務に戻ることができる

非常用だから誰も来ないし、大丈夫
そう思いながら、


ゆっくりとエレベーターの扉が開き
出ようとすると



「あぁ、その件だけどさぁ・・・」

と、
部長が大きなガラス窓を見ながら、
電話で話していたのを目にし
想定外の状況に
一瞬、その場で立ちすくむ


しまった・・・
サボってたのがバレてしまった

電話で話しながら
私の方をゆっくり見た部長

私は
こそっと、小さく会釈だけし
その場を後にしようとすると

右手をバッとつかまれた

「ひっ」


思わず声が出てしまう

すると
私の手をつかんだまま
軽くにらみ首を横に振り


「だから、早急に手配してくれないかなぁ
こっちだって忙しいからさぁ」


と、電話で会話を続ける


・・・

・・・


非常扉奥に広がる、この小さな空間

コーヒーの香りが漂う

・・・

・・・

完全にバレたな

トクントクンと心臓が打つ


「できれば、今日今週中には用意して欲しいんだけど？」


・・・
・・・

自分のデスクで電話してないってことは
仕事じゃなく、プライベートなんだろうか

そう思うと、
利いちゃいけないって思いながらも
悲しいかな、
耳がダンボになる私


いや、だって

私は掴まれた手を見る


こんなに掴まれてたら、
嫌でも会話は耳に入るよね

私のせいじゃない・・・

「記念日だから？ミナが喜びそうなサプライズな？
そう・・・いやいや花じゃなくてもっとさ・・」


・・・記念日
ミナって奥さんか


トクントクンと
心臓がなる


漂うコーヒーの香り
せっかく忘れかけてたのにな

46→←44

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す