追想-TUISOU-１０ Secretな彼女番外編 (ページ32)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:89,034 hit

32 ページ32

「もちろん、話せる範囲でいいんだけどさ。
10年経ってもどうしても俺自身の中で腑に落ちないことがあって」

そう言ってグラスを一回置きリンを見た

すると、リンは一旦、ウッドデッキの端を見て
自分で納得するかのように、軽く頷き俺の方を見た

そして軽く笑い

「もう、その時のことは話す機会はないと思ってた」

と困った顔をした

「こんな日が来るとは思わなかった？」

「うん。あの時、
確かに私はここで10年後、
私の選択が間違ってなかったと、
胸を張って言えるように
約束をして後悔をしないように過してきたんだけど
私の中では口約束みたいなもので、
会える期待はもちろんしてなかったよ」

「俺が忘れたとでも？」

「うん・・・
でも一応、1回だけ同窓会はあのあと行ってるのよ」

「知ってるよ。リンはカウンターで飲んでたでしょ？」

そう言うっと少し悲しい顔をした

「でも、翔は私には話しかけてくれなかったし、
テッチとか竹中くんとか男性同士でつるんでたから
私もなかなか声かけづらくて・・・
だってさとみもだけど、みんな
別れてから、私に気を使ってくれてるのがわかったし。
学生の時にあった私の居場所はもう無くなってしまった気がして」

そう言ってさらに困った顔をした

「んなことねぇよ、むしろ・・・
俺が話かけられなかったんだ・・・
そのドキドキして・・・
10年後ここで会うまでは会っちゃいけないとは思ってはいたんだけど
でも、ぶっちゃけて言うと、同窓会やみんなとの飲み会の時には
来てるんじゃねぇかなって、期待したり探したりしていた
でも実際？あの会場でリンを見つけた時
ほんと、気持ちが昂っちゃってさ
俺の決心も鈍るような気がして・・・声かけれなかったんだ
おかげで、あの日はめちゃめちゃ飲んでしまって
次の日、撮影なのに二日酔い」

そう言って、唇を少し舐めた

「そうだったんだ・・・」

「でもさ、今思えばそうやって思ってたということは
やっぱり、俺は納得できてなかったんだよね・・・きっと
なんだか、おかしな別れ方したような気がして
あの時、リンは行動と言ってることがちぐはぐ過ぎて
俺に言えない何かがあったんじゃないかなって
思えて仕方が無かったんだ」

リンはそっと目を離した

風が彼女の横髪をなびかせる

「仕方・・・無かったんだ」