追想-TUISOU-１０ Secretな彼女番外編 (ページ30)

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「いや、そういう意味しゃなくてさ・・・」

リンがジッと見る中で
俺は一口
そのブドウ種を口に含ませる

口当たりがよくて
飲みやすく、
あの赤ワイン独特のシガシガする感覚が残らなかった

「うっめ、なんだろう、
結構ドライなのに飲みやすいかも」

そう言うとフっと口元がほころんだリン

「私が作ったワインは、
主に日本に輸出されるの・・・
だから、
そもそも日本人に合うようなブドウの品種を
選んでるの」

「そうなの？」

俺はそのグラスをくるっとゆっくり回す

「これがあの10年前、
この丘1面苗木だったブドウの？」

「そう」

俺は感慨深く、もう1口含ませる
やっぱりうまい

「でもだったらさ、
日本人に合う様なワインを作りたかったのなら、
こんな逆輸入みたいな形で
わざわざ作らなくても
日本でもよかったんじゃねぇの？」

俺が疑問を投げると

「うーん、
ここじゃなきゃダメだったのよ・・・」

「どうして？」

「どうしてって・・・
もうずいぶん前の話になるけれど
翔、覚えてないかな？
学生時代にさ
私たちが専攻してたやつ」

「あぁ、環境経済学？」

「そう」

「それとボルドーがどういう関係なんだよ。
あ、ごめん、パン貰っていい？」

「どうぞ？」

そう言って俺の前にきったバゲッドを差し出す

リンもまた、サラダや生ハム、チーズなどを小皿に入れ
それを口に入れながら、ワインを含ませる

「学生時代に私たちさ環境について研究してたじゃん」

「あぁ、懐かしいな、
確かにしてたわ‥言われてみれば、
CO2濃度とかさ、資料集めに走ったよな」

うんうんと頷くリン

「それで、ワイナリーを作るにあたって、
当初は、日本でもちろん考えたの・・・
それこそ、山梨とか長野とか
でも、
日本の年間の温度上昇率を考えたときに、
ブドウを作り、
ワインを熟成させるまでの10年で
土地の気温が変わってしまうことに気が付いたの
卒論で」

「は？あの時の卒論で」

「そう、計算したら、
年に少しずつ、
北に移動していかなくてはならなくなる
畑ごと
遊牧民よりも大変よ」

「あはは、確かに羊じゃなくて、
畑ごと移動だったら、
そりゃ大変だわ
でも、あのみんなでふざけてた頃、
リンはそんなことを考えてたのか
おまえマジすごいな・・・てか、
そもそもなぜ、ワインなんだよ
リンの家は酒蔵だろ？」

「ん～。理由ありき反抗」

そう言って、パンをちぎってほおばる