追想-TUISOU-１０ Secretな彼女番外編 (ページ20)

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「無理・・でしょ」

「無理じゃねえよ」

・・・

リンが口をキュっと結んで俺をジッと見た
俺もその視線を決して外さず
むしろ・・・いや、傍から見れば睨んでいるかのような形相だったのかもしれない

おそらく、お互いに落ち着いて話し合おうとしているんだろうけれど、
上手く伝える言葉がみつからない

「10周年なんでしょ？」

「え？」

「デビュー10周年。」

「あぁ」

「それにドラマだって、舞台映画だって・・それに、私が諦めたキャスターの仕事だって・・・」

リンが何を言って、俺を説き伏せようとするのか
手の内が見える

俺は、ゆっくりそこを否定する

「そこは申し訳ないけれどすぐには、
無理かもしれない。
でも、時間をかけてでもどうにかするし」

もちろん、本気だった

学生の時とは違う
仕事に対しても。もうすぐには「辞めます」と言えるような状況では
無いのはもちろんのことだけれど、
それ以上に、俺がこの仕事に誇りを持ち始めていたからだった

リンの
大きく息を吐く音が聞こえる

「違うのごめん、
私、別に翔と結婚したいから、こんなこと言いたかったんじゃないんだ」

悲しそうな目でそう言った

そして、続けて

「私の未来は翔との結婚を望んでいるわけじゃない
むしろ、今、結婚したいとも思わない。」

・・・

「だったら、何？」

「・・もう無理なの、私
翔と一緒にいることが・・・」

そう言って泣き崩れたリン
膝を抱える形で顔を伏せてしまう

俺はしゃがんでしまったリンと
目線を合わせるように

向かい合って座る

「意味わかんねぇよ・・
お前の言ってる事がチグハグ過ぎて
俺のこと嫌いになったんだったら、そう言えよ」

その声は自分でも
コントロール不能になったのか震えていた

でもすぐさまリンは

「それは違う」

と即座に答えて、俺を睨みつけるように見た

「好き・・本当どうしようもなく、好き・・・
でも、もう無理なの・・・私」

リンは何かと葛藤しているようだった