衝動 ページ1
「プハッ」
水面からでてきた私を、翔さんが片手で引っ張り上げる
その腕は、濡れたTシャツからでも透けて見え
その鍛えられた腕の形に
こんな状況でさえ、その男らしさにドキドキした
「ほんと、バカじゃねぇの？」
その言い方は、少し乱暴で、明らかに怒らせていた
私の腕から手を離し
濡れた前髪を、素手で後ろにもっていき、
私を見る
でも、その眼はやはりどこか悲しげで、
そして、私を憐れんでいるようにも見えた
私は、
額から流れてくる、水の雫なのか
それとも目から流れ落ちる涙なのか
わからないまま、ただ茫然と現実の世界に立ちすくんでいた
「本当、このプールが、
今日はお湯で良かったよ、
これ、水だったら、
下手したら二人とも心臓が止まる冷たさだから」
そう言った翔さんに
私は答えることができなかった
「・・はぁ
ほら、あがろ・・・
新しい、服出してあげるから」
そう言って、私に背を向けて・・・
プールサイドから上がろうとした翔さん
「待って下さい」
「あ？」
少しだけ翔さんに歩みよるも
服が、水の中で張り付いたり離れたりし
それは普通ではない感覚で私にまとわりつく
「何？」
それは、少しめんどくさそうな言い方だった
私は、翔さんが私を遠ざけているのが身に染みて
それに比例するかのようにどんどん自分が、嫌になってきた
「翔さんは、明日、もうポルトガルを離れてしまうんですよね？」
「そうだけど？」
「・・・」
何も言えなくなり
一瞬たじろいてしまう
けれど
「それって・・・
こうやって、翔さんと、顔を見てお話しするの・・・
最後かもしれないってことで・・す・・・？」
声が震えて、最後までちゃんと言えなかった
「・・・」
翔さんは今度は上がろうとはせず、
プールサイドに背中を付く感じで私を見た
そして、何も言わないまま、私をジッと見つめている
どうして、また自分で苦しめるようなことを言ったんだろうと
後悔しながらも
それでも翔さんから目を離さなかった
そして、
ゆっくりと
「たぶん、そうなるだろうね」
と静かに言った
・・
・・・
それは・・・
もう、私とは、二度と会うことはない・・・
と遠回しながら言われたようなものだった
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紫姫(プロフ) - あきこさん» 一気読みお疲れさまです。ありがとうございます。あの情景をお伝えすることができて感無量ですwまた、ぜひどこかでお付き合いいただけたらと思います (2020年7月5日 20時) (
レス) id: ce56b6a958 (このIDを非表示/違反報告)
紫姫(プロフ) - おのりさん» 花火越えた？ロス消えた？いつもありがとう (2020年7月5日 20時) (レス) id: ce56b6a958 (このIDを非表示/違反報告)
あきこ(プロフ) - お話の続きが気になり一気に読みました。ロト岬にいる気持ちになり、話の世界観にぐっと引き込まれました。サイドストーリーも気になるし、ちょっとした続きも気になります。素敵なお話ありがとうございました。 (2020年7月5日 2時) (レス) id: ed922c5733 (このIDを非表示/違反報告)
おのり(プロフ) - 紫姫さんお話ありがとうございます。途中で何度も息が詰まりました。やっと2人会えたー！ハッピーエンドかな？と思いきやまだその先は私が思ってた甘い話ではなくて、いつもは続きが気になるけど、今回は2人に任せたいな！と思ったくらい大きいお話でした！ありがとう (2019年9月29日 8時) (レス) id: e09bbc376b (このIDを非表示/違反報告)
紫姫(プロフ) - yuriさん» あら大変ｗ泣かせてしまいました・・・スケールが大きいストーリー展開になったので。 途中、最初の方に置いていた附箋を回収する作業に後半、焦りました。 でも無事に、まぁるく収まってよかったです。ありがとうございました。 (2019年9月26日 8時) (レス) id: 798db29bb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫姫
| 作成日時：2019年6月5日 23時
