貴女は知っているのかな ページ6
「ん、美味しい!」
「アハハ、朱莉さん、クリーム鼻に付いてる!」
「ひゃ!? ご、ごめん」
「かーわーいーいー♡」
さて、今私たちは何をしているでしょうか?
正解は〜
「クレープデート最高!」
「それな!」
クレープデートでした!
因みに、間接キッスは済ませたよ!
「オイシー!」
クレープの美味しさに悶絶している朱莉さんと、朱莉さんの可愛さに悶絶している私。
「次どこ行く!?」
「そうだなぁ〜。 男子とはぐれたし、探そうか」
嬉しさに感極まってハイテンションな私と至って冷静な朱莉さん。
「エー・・・。 そうだね、探そ」
立ち上がり、チャッカリと手をつないで歩き出す。 後ろからの視線に気が付かないふりをして。
「そんな風に後から着いてこられると、何だかなぁ」
「如何したの?」
「ん? いや、一寸ね」
可憐ちゃん、貴女は其処で息苦しくないの? 欲やカネに溺れた人間の中で、笑っていられる? 守ってあげるよ、可憐ちゃん。 だから
「ずっと知らないまま、真っ白で綺麗な笑顔でいてね」
君には笑顔が似合う。 そんな風に周りに合わせて作っている笑顔なんかよりも、もっと純粋な、心からの笑顔がね。
「Aちゃんは、寂しそうね」
「え?」
「いつも貴女は、皆を見て眩しそうに目を細める。 憧れと哀しみの入り交じった目で、貴女はいつも笑っている私たちを見る。 まるで手の届かぬものに手を伸ばす子供のよう」
眼鏡の奥の瞳が私をしっかりと捉えて離さない。 純粋で真っ直ぐなその眼差しは、私には少々眩しすぎる。
「・・・そんな風に、貴女たちには見えるんだね。
朱莉さん、貴女は」
知っているのかな
大好きな両親を失う哀しみ。 両親がいなくなり、世界に味方がいなくなったときの恐怖。 そして
「そんなときに伸ばされる、暗闇からの手への希望」
貴女たちには決して起こりえないと言えない現実。 だからこそ、人々はそのことから目を逸らす。 私たちが貴女たちを見るときに感じるのは、劣等感や屈辱感、敗北感や、哀しみ。
「Aちゃん?」
「嗚呼、ゴメンね? さあ、行こうか」
「ええ」
貴女は愛されてる。 でも、私は? 血の繋がりはこの世に一つもない、天涯孤独の身となった私は?
本当に愛してくれる人は、いるのかな?
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なすび(プロフ) - りとのおへやさん» 有難うございます! これからもそう言っていただけるよう、頑張りますね! (2019年6月2日 21時) (レス) id: 6cdc79c834 (このIDを非表示/違反報告)
りとのおへや(プロフ) - めちゃめちゃ良かったです!中也オチマジで神!!!本当に、こんな神作品を読ませていただけて感謝しかないです! (2019年6月2日 20時) (レス) id: 534e38ce7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なすび | 作成日時:2019年1月30日 21時