57.君のせい ページ10
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「うぅあ…。う、陸上選択してる時点で察してくださいよ!泳げないんです!!!」
もう自棄になって叫ぶ。
きっと運動神経のいい子の方が、一君とアクティブに遊べるんだろうな。
好みもきっとそういう子何じゃないかとか、一瞬熱くなった頭に過る。
私がちょっと怖くなっておずおずと見上げると、一君が一瞬目線をどこかにやって、すぐにこちらに笑顔を向けてくれた。
ケラケラと大好きな笑顔で彼が笑う。
「そうだっけ?」
「そうですー」
そしてその後すぐ誰かに呼ばれたのか、首を振り向かせている。
一瞬でも視線がそらされた事に、少し寂しくなった。
のに。
次の瞬間。
黒目がちの双眸がこちらに向けられ、宙を泳いでいた私の視線を絡めとる。
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口角に笑みを携えて。
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その顔面に黄色の花が咲く。
「じゃあな。ぶっ倒れるなよ」
あー、ちょろい。ずるい。
あんな笑顔ズルい。
茹るような暑さだったのが、今度は別の意味でのぼせそうだ。
「おまたせー。9.5秒だったー。疲れたー」
友人が記録測定から帰ってきた。
ふらふらしながら帰ってきた事だけは分かるがそれどころじゃない。
それ、どころじゃ、ない。
一君が居なくなって、私の足から力がどんどん抜けていく。
それは風船のヘリウムが抜けていくように。
ズルズルと私はその場でしゃがみこんだ。
「え!?ちょ!?A!?どした!?」
友人は慌てて駆け寄ってきた。
「ちょちょちょ!?顔真っ赤じゃん!?」
「うぅぅう…熱中症で倒れたら、はじめ君のせいにしてやる・・・っ!」
「はぁ、何言ってんの?」
私は脳内にこびりつく向日葵のせいで中々顔から熱が引かない。
抱え込んだ膝に顔を埋めて、悪態を吐くしかないのだ。
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ここまで読んで下さってありがとうございました!
一回逸らされて、もう一度合わさって、きらっきらの笑顔を落とされるの大好きです(何の話)
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白米 - 夢主ちゃんの初々しさが可愛すぎて、岩泉くんがイケメンすぎて、キュンキュンが止まらないです! 言葉選びもとっても素敵で好きが溢れ出します! (2023年1月28日 13時) (レス) @page21 id: c47ed55b6d (このIDを非表示/違反報告)
あおい亜緒(プロフ) - 素敵すぎます、更新待ってます^^ (2021年11月29日 7時) (レス) @page5 id: 4763f9e9c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:結城 | 作成日時:2021年10月3日 23時