雨の生き様 【煉獄杏寿郎】

無限列車 ページ46

『そんなに叫ぶな…お前も怪我をしているんだから』

「Aさん…Aさん」


『こっちにおいで…最後に話をしよう』

「っ…」

『杏寿郎…』


「…」


『君も…』



炭治郎はAの元へと歩み目の前に座る
煉獄も炭治郎の横に座り込む、顔を上げてはくれない



『君に、話しておかないといけないことがある』

「っ…」

『俺には予知と言う能力がある』

「え…？」



『先の事を読む力だ、全てがわかる訳では無いが断片的な事は頭に浮かんでくる
お前が…使っている日の呼吸、はじまりの呼吸は必ず無惨を倒す道標となる


煉獄家に行け、書物が…ある』



陽光が差し込むと猗窩座の腕は塵となり血がそのまま地面に垂れ流される



「もう。いいですから！呼吸で止血を…助かる方法はないんですか！？」

『無い、俺はもうすぐ死ぬ、話せるうちに話すから聞いてくれないかい』

「っ…」


『千寿郎には…自分の道を進むように…ち…槇寿郎さんには…体に気をつけるように…他の、鬼殺隊士や柱の皆には…鬼を少しでも多く倒し

早く平和な世が訪れるように…』



「っ」



煉獄が歯を噛み締める音が聞こえた



『炭治郎』

「はいっ」


『妹に、酷いことをしたな。済まなかった』

「もういいんです！あの夜。謝ってくれてたじゃないですか！！」


『…炭治郎』

「っはい！」

『俺は、お前たちを信じる』



「っ」

『辛く、悲しいことがあっても…消して下を向くな
前を向け。時間は止まってくれない

歩み寄ってはくれない。



俺がここで死ぬことは気にするな

後輩を守るのは先輩の役目だからな

若い芽は積ませない』



「Aさんっ」


『杏寿郎』

「…っ」



『すまなかったな』



「ふざけるな」

『…』


「煉獄さん…」



「謝罪をするくらいなら俺と一緒に家へ帰れっ
千寿郎が待っているんだ！俺だって！

何故かばったっ！」


『…生きていて欲しかった

お前には、幸せになって欲しかった


笑って欲しかった


泣かないでくれ』


「っふ…」

『心を燃やせ』




Aは煉獄の頬に手を伸ばし優しく微笑むと炭治郎に再び目線をずらす



『強くなれ』




あぁ、母上



俺は、ちゃんとやれましたか？



大切な人を、守れましたか？


やるべき事を、果たすべき事を全うできましたか？














【立派にできましたよ】





あぁ、やっと眠れる




Aは静かに笑顔を見せると煉獄の頬に添えていた手がゆっくりと地面に落ちた

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