【奴良組】この手に掴んだ幸せを。【ぬらりひょんの孫/男主】

幸せ87 -鯉伴side- ページ46

隣で酒を煽る姿に、自然と頬が緩む。


Aに合わせて甘口の日本酒にしたが

どうやらいたく気に入ったらしい。


コイツとリクオの甘党は若菜に似たなぁ。



…にしても全然杯離さねぇなコイツ。

こんなに酒瓶ばかり手にすんのも何十年ぶりだ？



「…親父も飲む?」


鯉伴「やっと誘ってくれんのかい…。一人で飲み干すかと思ったぜ。」



ようやく杯を手放し、慣れた手つきで酌をしてくれる。


普段の宴会でもやってくれるが

やはり今日、Aがやってくれる事には特別感がある。





13歳。




妖怪で言えば元服の年。


ついこの前まで抱き上げられるほど小さかったと思ったら

今では俺の肩に届くまで大きくなった。


背だけじゃなく髪も一つに結わえるほどに伸び

親の欲目を差し引いても美丈夫に育った。


実際、街を歩けば女だけじゃなく男まで振り向くし

今酌している姿ですら目を引かれる。



親としては自慢できる反面、心配でもあるんだが

なんにせよ、本当にイイ男に育ったもんだ。





「何だよニヤニヤして。」


鯉伴「んー？可愛い息子の元服だと思うと、感慨深くてねぇ。」


「俺は法律上はまだガキだっつーの。」


鯉伴「妖怪としちゃ立派な大人さ。」




久しぶりの甘い喉越しに、息が漏れる。


二杯目を頼もうと見やれば

Aが胸の傷をなぞっている姿があり、一気に熱が引いた。



鯉伴「傷、痛むのか?」


「え？あ、イヤ…」


鯉伴「本当か？変な我慢とかしてねえな？」


「してねーって！大丈夫だから！」




ジタバタと暴れるAを抑えて

傷を確認する。


膿んだり腫れたりしている様子は特にない。

顔色を見ても至って普通だ。


取り敢えず、大丈夫そうだな…。




鯉伴「･･･あれから、６年か。」


「…ん。」





あの日を思い出すだけで心臓が抉れるように痛い。

全てを失ったと思った。


けれど、今生きて俺の目の前に居る。


あの日の面影と傷跡を残しながら

それでも確かに成長し続けている。


愛おしくて仕方がない。

ただその想いだけが溢れてくる。




鯉伴「A。」


「え？」





抱き締めた場所から温もりが伝わる。


大きくなったと言っても、まだ俺よりも小さい。


抱き締めれば大人しく身を委ねる所も変わっていない。




嗚呼、どれほど愛おしいことだろう。





鯉伴「誕生日、おめでとう。


心の底から、愛してるぜ。」





言葉にした瞬間

無意識に、俺はAの頬に手を添えていた。

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