【鬼灯の冷徹】輪廻転生〜矛盾〜

漆拾伍 ページ30

鬼灯side







_______丁さん






遥か昔の呼び名で呼ばれ、目を覚ました





辺りは一面真っ暗で、何故か私の体だけが、ぼうっとほのかに光っている




なるほど、どうやらこれは夢の中のようですね





すると、急に暗闇が歪み、私のように体がほのかに光っている少年と少女が現れた





女の子の方は分かりませんが、男の子の方は………







あれは……………








……………あれは、昔の私？







？「丁さんは干してください。私は洗います」




丁「冷たくないですか？私がやりますよ」




？「ｸｽｯ丁さんは優しいですね。でも、それ昨日も言ってましたよ。というか毎日言ってますよ……(苦笑)」




丁「え？……そう、でしたか？」




？「はい。大丈夫ですか？最近上の空のことが多いですよ」




丁「っ、大丈夫です……」





二人はとても楽しそうで、嬉しそうで、何より幸せそうだった




昔の私も、心なしか柔らかい表情をしているように見える






丁「……あの…明日、この間言っていた所に行きませんか？」




？「勿論です。二人で行こうって、約束しましたからね」





そう言って、少女は小指を出した





その小指に、丁は自分の小指を絡め、少し恥ずかしそうに目をそらす





そんな丁を見て、少女は何を思ったのか丁に抱きついた





？「丁さん、大好きですよ。大大大好きです！」




丁「！？…………私もです……なので、」









次の言葉の替わりに聞こえたのは、小さな子供の叫び声だった









鬼灯「ｯ！！！？？っはぁ､はぁ､はぁっ…」





その叫び声で、本当に目を覚ました







叫び声は酷くリアルで、それはその前に見た子供二人の幸せそうな風景を忘れてしまいそうなほど









体には、まるで悪夢を見たかのように、滝のような量の汗と、頭にへばりつく気持ちの悪い感覚だけが残っている








あの少女は一体？







最近頭の中にいる主でしょうか？







そしてあの叫び声………





一瞬しか聞こえなかったのに、その一瞬だけで、恐怖、怒り、悲しみといった、負の感情が伝わった





もしも、「ムンクの叫び」のムンクが聞いた叫び声があれだったのなら、確かに驚いてあんなポーズにでもなるでしょうね









なんにせよ、嫌な予感がするのは確かです

漆拾陸→←漆拾肆

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す