59匹砕ける。 ページ9
『…結論から申しますと。
現実でも、■■■としても塾講師を勤め、
数々の動画を経て『教授』という呼び名を獲得した身としては……
カンニングという行為は肯定できかねます。』
「やはりか。」
『ええ。しかし、まぁ。』
(とうの昔に痛みは引いていた)自分の利き手に、突如として銃が握られる。
そのまま銃口は、(先程の場面の再演のように)『エーミール』へ向く。
『どうせこの空間での出来事は忘れてしまうのですから。
ヒントぐらいなら差し上げますよ。』
銃口を向けられても眉一つ動かさずに『エーミール』は言葉を続ける。
『まず1つ。
肉体あるところに精神あり。
肉体と精神はさほど離れてはいません。
…そもそも、精神が肉体から離れすぎてしまうと確実に死にます。』
人差し指を立てた『1』の手が、加えて中指を立てて『2』の手になる。
『私が、『エーミール』が精神を置いているのは…
私たちが、我々が。重点的に活動していた場所。
…場所、とはいっても。現実世界の何処ぞ、というわけではありません。』
2本の指に薬指が加えられ、『3』の手になる。
『現実世界でない場所をどうやって探せばいいか?
…手がかりは…「顔のない国民たち」。
私が消滅を選ばざるをえなくなった、大きな要因。
それが『エーミール』を見つけ出すきっかけとなることでしょう。』
その手は『4』にならず、『3』のままで静かに全ての指が畳まれ、下ろされる。
肉体あるところに。我々が重点的に活動していた場所。「顔のない国民たち」。
──ああ、さては。
─いや、まさかそんな。
──しかしこうして信じ難いことが連続で起きている中、最早信じるしかないのでは。
思考をグルグル回すうちに、自身の手は今まさに『エーミール』を撃ち抜かんとしていた。
「…『エーミール』」
『何です』
「我々は必ず、我々から奪われたエミ兄やんを奪い返しに行く。
覚悟をしておくことだな。」
『エーミール』は笑う。ただただ、笑う。
表面的に笑う。
『…そんな気はしてました。
ほんと、グルッペンさんらしいわ。』
そう目が細められ、弧が描かれて。
軽快な発砲音1つ、
目の前の相手の額に穴が空いて、
相手が椅子に崩れ落ちて、そのまま。
意識が茹だる。溶ける。霧散していく。
「──戦争を始めよう。
奪われたものを奪い返すための、戦争を───」
夢現な自身の宣言をただただ朧気に聴きながら。
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きんにくふぇち@他力本願。(プロフ) - エミさん声出し記念7周年の翌日にこれみるとかどんな奇跡だよ…すき… (12月30日 1時) (レス) @page28 id: 5ebe7ae459 (このIDを非表示/違反報告)
烏丸 - すごい…感動出来る……この小説をきっかけにemさんのアンチスレを実際に見てみました…いい意味で生々しいというか、心に響く作品ですね…応援してます!! (2023年4月5日 14時) (レス) @page24 id: 144a6ab78e (このIDを非表示/違反報告)
アルト - 新しい話出てる!久しぶりだぁ…!嬉しいです!! (2023年4月1日 20時) (レス) @page23 id: 55059b1f92 (このIDを非表示/違反報告)
ひるねる - コメント失礼します!世界観?というか設定?好きです!(語彙力消失)やっぱりこのダサいくらいのエミさんがエミさんやな!(決して本人をバカにしている訳ではありません)更新頑張ってください!(*´∀`*)尸" (2023年1月23日 3時) (レス) @page22 id: 7cd55c346b (このIDを非表示/違反報告)
森の民(プロフ) - 続編だぁ!こんなに素敵な小説をいっぱい見れて幸せです〜! (2022年8月11日 18時) (レス) @page1 id: 6c1a629d1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マンゴスチン | 作成日時:2022年8月11日 14時