58匹砕ける。【消滅:黒】 ページ8
エミさんは今どこにいる？、という問に目の前のエーミールは眉を顰める。
『……なんや、まるで私が『エミさん』じゃないみたいな言い方しますね
酷いわグルッペンさん』
「だが案外的外れでもないだろう？」
目の前にいるのはエーミールだ。
エーミールを騙った誰かでもない、エーミール本人。
それは間違いない。
…しかし。
「お前が『エーミール』だということは分かっている。
ただ…今まで我々が面してきた『エミさん』と思い比べると、どうにも違和感が拭えなくてな。」
目の前の相手からは、
普段の『エミさん』が持つ、危なっかしく思えるほどの和やかな雰囲気も
考えているのかいないのか不明瞭な、どこか気の抜けた言動も
常に緩く笑みを抱いていた、頻繁に変わりやすい柔らかな表情も
全て、全てなりを潜めて。
代わりに、酷く鋭く研ぎ澄まされた『敵意』ばかりが強く感じられる。
…こうなると、自分でさえ「気は確かか」と自分自身に問いかけたくなるような考察が頭に浮かぶ。
「……お前は『エーミール』であって、『エーミール』ではない。
つまりは、
『エーミール』の『副人格』のようなものではないか、と私は考えているのだが。」
馬鹿げた考察を口にすると、『エーミール』は目を大きく見開く。
見開いて、くるりと視線を横へ動かす。
そのまましばらく、考え込むように沈黙して…こちらを向いた。
『…かもしれないですね』
「えらく曖昧やな」
『まぁ、はい。今の今まで、そんな自覚は無かったものですから。…でも』
「でも？」
『納得はできます。
ええ、きっと。私はあなた方のよく知る『エーミール』…『エミさん』の副人格であるかと。』
馬鹿げた考察が当人からの肯定で正答とされた。
…事変が、ますます空想じみてきた。
『…それで、『エミさん』は何処にいるのか、でしたっけ？』
「ああ。『肉体』についてはアテがある。
ただ、『精神』については…現状で、肉眼で見えない抽象的な事象を探し出せる術は1つも持っていない以上
…どうにもならん。どう足掻こうと探し出せん、お手上げや。」
『だからもう自力で『答え』を導くのは諦めて、
そういうことですね？』
目の前の『副人格』は目を細める。
細めただけの目は、弧を描かない。
「そうなるな。」
その目を見つめた。不正を恥じることなく、堂々と。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 218人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きんにくふぇち@他力本願。(プロフ) - エミさん声出し記念7周年の翌日にこれみるとかどんな奇跡だよ…すき… (12月30日 1時) (
レス) @page28 id: 5ebe7ae459 (このIDを非表示/違反報告)
烏丸 - すごい…感動出来る……この小説をきっかけにemさんのアンチスレを実際に見てみました…いい意味で生々しいというか、心に響く作品ですね…応援してます！！ (2023年4月5日 14時) (レス) @page24 id: 144a6ab78e (このIDを非表示/違反報告)
アルト - 新しい話出てる！久しぶりだぁ…！嬉しいです！！ (2023年4月1日 20時) (レス) @page23 id: 55059b1f92 (このIDを非表示/違反報告)
ひるねる - コメント失礼します！世界観？というか設定？好きです！（語彙力消失）やっぱりこのダサいくらいのエミさんがエミさんやな！（決して本人をバカにしている訳ではありません）更新頑張ってください！(*´∀｀*)尸" (2023年1月23日 3時) (レス) @page22 id: 7cd55c346b (このIDを非表示/違反報告)
森の民(プロフ) - 続編だぁ！こんなに素敵な小説をいっぱい見れて幸せです〜！ (2022年8月11日 18時) (レス) @page1 id: 6c1a629d1f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マンゴスチン | 作成日時：2022年8月11日 14時
