【d!】教授消滅事変

48匹砕ける。 ページ48

…アカン、失敗した。


本当はもうちょっと、強く言うはずやった。それはもう、胸倉を掴んでガン飛ばすぐらいの勢いで。


きっと、今のエミさんは。

強引に手引くぐらいが、命令で無理やり従わすぐらいが、むしろ丁度いいはずやから。

もっと、強く言うべきやった。


……でも、ダメやった。

本人目の前にしたら、なんか、何でか知らんけど、そんなことできひんかった。


しかも最悪、なんか急に涙と鼻水が止まらなくなってん。

ガキやないんやから、なあ、泣くなや俺、涙も鼻水も嗚咽も、全部ひっくるめてさっさと止まれ、…ほんま、最悪。




「…ゾムさん、泣かんとい」


「ッさいﾞわﾞ、ボケェｯｯ！！！

誰ｯのｯせい、でｯ…こうなってると、思っとんﾞ、ねﾞんﾞっ！！！」


「えぇこわ…」




みっともなく鼻が鳴る。


いい歳した成人男性がお前が原因でこんな子供みたいに泣いとるんやぞ、

もっと、言うこと、やること、なんか他にあるやろ、ほんま腹立つ。




「エミさんのアホ、ほんまアホ！！今世紀最大のアホ！！

何しとんねんお前、どこおんねんお前、わけわからんことしとらんでｯ

はよｯ、俺らんとこ、帰ってこいやぁっ！！」


「ぅ、おっ、ちついてくださいゾムさん！」




──おいここ大先生もくられ先生も隠れとるだけでおるんやぞ。

ちょっとは慎んだらどうや、と最もらしいことを言ってくる脳内の俺を殴り飛ばす。


るっさい馬鹿。

こちとらエミさんに言いたいことばっかあんねん。

『意識の共有』が叶う時間が限られてる中、いつ『強制力』が働くかわからん中、

気持ち落ち着かせてる暇なんかないんや馬鹿。




「許さへん、ｯお前、俺らのこと好きじゃないんか！

本当は俺らともっと居たいんやろ、居たいって言え！！

こんなことさっさとやめろ、誰のためにもならへ」


「なるよ」


「………ぁ？」




エミさんが、くしゃりと泣きそうにも見える笑顔を浮かべた。




「それが、なるみたいなんですよ、ゾムさん。

…落ち着いて、聞いてくださいね？」




瞬きの間に、エーミールの後ろに。

『文字』が───誹謗中傷の群れが現れて。


瞬き1つ、嘲るような悪意と共に。

ワッ、と洪水みたいに、津波みたいに、とにかく、暴力的なまでの勢いを持って。

『「エーミールの消滅」の切望』を、捲し立ててきた。




息、が、止まる、ような、心地がする。



……なぁ、エミさん。もしかして。

ずっとこれ、今まで、ひとりで抱えてきたん？

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