佰玖拾弐鬼__覗いた目の先 ページ6
*No side*
「心が死ぬだけの奴らと一緒にされては困るな……」
血に濡れた鶴丸が、持っていた髭切を乱雑に放
る。
庭に敷き詰められた玉砂利が固く髭切を受け止
めると、流れくる血に赤く染まった。
「何で……私の部隊は最強のはず!!だって、だって"特別"なんだもの!!」
「"特別"だ何だと話は見えないが……驚いて貰ったなら何よりだ」
信じられないと否定するように叫ぶ翠茜の声を
鬱陶しいとばかりに鶴丸が血の滴る刀を振って
血を飛ばす。
「すまない……あにじゃ……ッ」
鶴丸の後ろでは、髭切と同じように傷ついた刀
剣達が庭に転がる。
悔やむように兄の本体を握りしめる膝丸に髭切
は力なく微笑んだ。
「何よ……何で……何でよ……」
「貴女の言う"特別"が何かは知りませんし、知りたくなどありませんが……主様以上に特別はいらっしゃいませんから……」
「そろそろ、罠にかかったのは己だと自覚してほしいな」
狼狽える翠茜を煽るように廊下の先から声をか
けられる。
それに顔を向ければ、血に塗れた体と、刀身か
ら廊下へと滴り落とす二振の刀剣が呆れたよう
に翠茜を見据えた。
「その血は……もしかして……!」
先程まで此処にいなかった刀剣が浴びた血など
一つしかない……。
それが分かるからこそ、青ざめた鯰尾が言葉を
詰まらせた。
「皆、望んでお前の"特別"から解放された。それは幸せそうに笑っていたな……」
「そんなはずない!特別な私に特別だと認められたのよ!?それなのに、それを自ら捨てるなんて……!」
『特別とは何を表すんだろうな……まぁ、欲しかった情報は既に手に入った……』
必死に否定する翠茜に色を持たない熾鬼の声
がかけられる。
それに振り返った翠茜は鬼の姿へと成った熾鬼に目を見開く。
『不用意に閻魔の目を覗き込まないことだ』
金色の瞳が、翠茜の魂を捉えたように思えた…。
「審神者、こんなことをさせるためのあの編成か?……随分と嫌なことをさせるな……」
「まぁまぁ、鶴丸殿。嘗ての我々のように苦しむ彼等を放ってはおけません。何より、主殿の望むことですから」
「まぁ、あまり良い気はしないがな」
防衛のためとはいえ、同じ刀剣を傷つけること
を快くは思わないのだろう……。
フードの隙間から熾鬼を睨みつける鶴丸は、
大勢の前に演練のためとはいえ連れて行かれた
ことも相まってか、不機嫌そうに吐き捨てる鶴
丸に、隣りで宥めるように一期と薬研が苦笑を
溢した。
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蓮夜 - 更新待っています。みたいです。無理せずに。応援してます。 (5月15日 2時) (レス) @page9 id: 574d664119 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - すごく面白かったです!!もう更新しないんですかね?面白かったので続きが見たいです!!!!!!! (2022年12月6日 18時) (レス) @page9 id: ef650c7495 (このIDを非表示/違反報告)
akithin.(プロフ) - 更新はもうされないのでしょうか? (2020年8月24日 23時) (レス) id: e324714dd9 (このIDを非表示/違反報告)
咲くや - 面白くて続きが気になります 更新頑張ってください。 (2019年11月28日 6時) (レス) id: 2369d330ed (このIDを非表示/違反報告)
% - 一日でここまで読み進めました!凄く面白かったです!更新頑張ってください! (2019年11月14日 17時) (レス) id: 02aec80553 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朔櫻 実桜 | 作成日時:2019年10月31日 0時