厄災三十と四 ページ39
「して、主よ!こうして我らが新たに主の”仲間”とやらになったわけだが、これからどうする?」
『どうする??』
にかりと笑った岩融の言葉に、意図が掴めない
と虧月が首を傾げる。
ぬいぐるみを腕に見上げる小さな主を見下ろし
て、その様子に岩融は目を細めるとその頭に手
を置いた。
「我ら三条を含め全部で7振。一隊つくることは出来るが……主は我らに出陣を命じるか?」
『しゅつじん……』
「…………」
頭に置かれた手の奥で、岩融の瞳がまっすぐと
虧月を見つめる。
「ちょっと……岩融……」
掴むように置いた手に僅かに力が入るのを周り
を囲む刀剣達が見守るなか…………
虧月はきょとりとそれを見つめ返すと、頭に乗
った手を小さな手で触れて、へにゃりと笑った。
『えっと、いわとおし?さんの手って大きいね!えーげつより全然大きくてゴツゴツしてる!』
「……!」
『あ、えっと”しゅつじん”だっけ?…んー……行きたいなら行っても良いけど、行きたくないなら行かなくて良いんじゃないかな?僕はどっちでも良いかなぁ…………。それよりも、おっきな手があるなら、林檎とかぐしゃっ!て出来るの?林檎ジュース作れるの??』
「…あー……と…だな……」
僅ながらに”脅し”を含めた問いかけであったの
だが……。
それに気づかないのか、純粋にきらきらと両目
を輝かせて見上げる虧月に岩融も戸惑いを見せ
て言葉を詰まらせる。
少しばかりの悪戯と忠告を込めての言葉と手で
あったのだが…………。
片手で”何か”を握り潰すというところまでは良
かったのだが……完全に職務よりも別のものに興
味を示してしまった幼子に話を戻すのも難しい
ものだ……。
「はっはっはっ……純粋なのもまたやりずらいな」
「岩融もそれぐらいにしないとそちらの刀に斬られてしまうよ」
「直ぐに斬り殺したりなんてしねーですよ。」
『潰した林檎って潰し続けたらすりおろし林檎になるのかな?』
「主、話し脱線してるけど……」
思わず唖然と見下ろす岩融の周りで外野が騒ぎ
出す。
先程の一瞬の緊張感は何処へか……
岩融を置いて各々が好き勝手に騒ぐ場に、話し
を戻すのも野暮……
肝心の主もこの調子では話を続けるのも不可能
だろう……。
「……はっはっはっ!」
目の前ですりおろし林檎に思いを馳せる虧月に
岩融は豪快に笑うと、乗せていた手を動かして
わしゃわしゃと頭を撫でた。
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不思議の国の有栖さん(プロフ) - 最高です (2021年1月15日 23時) (レス) id: 1031f2154f (このIDを非表示/違反報告)
紫羅那@龍蓮(プロフ) - 更新頑張ってください!めっちゃ好きです! (2020年3月11日 17時) (レス) id: 52a85e5aa6 (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - 羅維さん» 応援の御言葉ありがとうございます!!楽しみだと言っていただけて嬉しいです!最近中々更新ができませんが、なるべく早く更新できるように頑張ります! (2019年5月14日 16時) (レス) id: b4a1ce9c3e (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - 闇夜さん» ありがとうございます!!重症待機とは……!早く手入れという名の更新をせねばですね!(笑) 好きだと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります (2019年5月14日 16時) (レス) id: b4a1ce9c3e (このIDを非表示/違反報告)
羅維(プロフ) - 続き、スゴく楽しみです!応援してます! (2019年5月4日 12時) (レス) id: 11865369a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朔櫻 実桜 | 作成日時:2019年3月25日 17時