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厄災二十と七 ページ32

泣いた小狐丸が落ち着いた頃、優しく頭を撫で

ていた虧月の手が止まる。

そのまま体を離して小狐丸の顔を見ると、にこ

りと優しく微笑んだ。

『僕の血飲んで良いよ』

「ッ……!」

本当に血を与えるつもりだったのか……。

確かに先程血を与えると言ってはいたが、いざ

許しを貰ったところで戸惑うもの……。

……しかし、喉が渇くのもまた事実……。


その体に牙を突き立てるのを戸惑えば、虧月は

困ったように微笑んだ。

『大丈夫だよ』

「ッ……!!」

そうして、そのまま小狐丸の頭の後ろに手を回

して、自身の首元に近づける。

安心させるように呟いた優しい声色と温もりに

躊躇していた理性は途切れ、両腕でしっかりと

虧月の体を包み込んだ。


『ッつ……ッ!』

ブツリと鋭く尖った犬歯が虧月の首筋に突き刺

さる。

穴の空いた皮膚から溢れ出す赤い雫に舌を這わ

せれば、口内に広がる血の味と温もりに夢中で

縋りついた。

「ッは……」

『ッ……』

熱い吐息を溢しながら夢中で血を啜り、血が止

まりかければ再び牙を立ててその血を飲み込む。

首筋に走る激痛と血を与える感覚に虧月は小狐

丸の首に両腕を回しながら声に出さないように

それを堪えた……。






「ッはぁ……」

どれ程そうしていただろうか……。

最後に残った血に舌を這わせて小狐丸が顔を上

げた。

恍惚と満足そうに……それでいて、どこか申し訳

なさそうに自身の付けた傷口を優しく撫でる。

優しく撫でる指に擽ったいと虧月が笑った。

「申し訳ありません……今手当てを……」

『大丈夫だよ』

「そうもいきません」

傷口に大丈夫だと笑う虧月を傍目に棚の上に置

かれた救急箱を手にとり、首筋にガーゼを当て

る。

それをテープで止めて固定すると、優しくそこ

を撫でた。

『ねぇねぇ、ずっと思ってたんだけどね』

どこか後悔するように眉を寄せる小狐丸に虧月

が口を開く。

唐突の言葉に小狐丸が首を傾げれば、虧月は

嬉々として笑った。

『小狐丸さんの髪って、綺麗でふわふわしてるね!』

「!……髪……ですか」

『うん!僕、小狐丸さんの髪好きだなぁ』


……髪など、戦に身を置く中で気になどかけてこなった……。
他の本丸の自分が主に褒めてもらったと嬉しそうに髪を櫛で梳いていたのが理解出来なかったのだが……。
……なるほど……これは嬉しいものだ……。

「ならば、今度梳いてくださりますか?」

『いいの!?』

嬉しそうに笑う虧月に笑みが溢れた。

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不思議の国の有栖さん(プロフ) - 最高です (2021年1月15日 23時) (レス) id: 1031f2154f (このIDを非表示/違反報告)
紫羅那@龍蓮(プロフ) - 更新頑張ってください!めっちゃ好きです! (2020年3月11日 17時) (レス) id: 52a85e5aa6 (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - 羅維さん» 応援の御言葉ありがとうございます!!楽しみだと言っていただけて嬉しいです!最近中々更新ができませんが、なるべく早く更新できるように頑張ります! (2019年5月14日 16時) (レス) id: b4a1ce9c3e (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - 闇夜さん» ありがとうございます!!重症待機とは……!早く手入れという名の更新をせねばですね!(笑) 好きだと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります (2019年5月14日 16時) (レス) id: b4a1ce9c3e (このIDを非表示/違反報告)
羅維(プロフ) - 続き、スゴく楽しみです!応援してます! (2019年5月4日 12時) (レス) id: 11865369a3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朔櫻 実桜 | 作成日時:2019年3月25日 17時

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