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厄災十と二 ページ17

万が一……万が一にもだ……。

虧月の懇願に負けて部屋の外に連れ出していた

ら虧月はどうなっていたのだろうか……。

……いや、虧月の場合はその彼等を見つけたかっ

たのだから、虧月の目的は達成出来たのかもし

れない……。

しかし、刃に傷つけられなかったとは言い切れ

ないのだ…。

禍ツ神とはいえ無力な幼子の姿をした主だ………

いとも簡単にその細く柔らかな喉元を掻き切ら

れていたかもしれない……。

それも、気配に全く気づかなかった……つまり、

油断していたのだ…。

もしかしたら訪れていたかもしれない未来に加

州は不甲斐ない自分を悔やんだ。


『僕に会いに来てくれてるんだもん、一緒に遊びたかったんだ』

「……主、彼奴らは……主を……」

『知ってるよ』


悔やむ加州を他所に遊びたかったと笑う虧月。

……まるで、闇を知らないその無垢で純粋なその

言葉に言葉を詰まらせると、虧月はにこりと微

笑んで首を傾げた。

『僕を殺して無かったことにしたい、もう傷つきたくないって思ってるんでしょ?』

「え……?」

『だから、"かくれんぼ"なんだよ。隠れてる"鬼"を捕まえないと危ないもんね』


嗤って何でもないことのように答える虧月を前

に、加州はぞっと粟立つのが分かった。

……あまりにも子供のような言動をするものだか

ら、本当に"遊びたいだけ"だと思っていた……

思いこんでいた……。

こんな幼子の姿をした……純粋に本能の赴くまま

にはしゃいでいた虧月が……全てを知って尚の言

動をしていたのだ…。

それも、それを考慮して……。


純粋な幼子の笑顔の裏に……子供とは似つかないその冷酷な瞳が垣間見えた気がする……。


「……捕まえて……どうするの?」

『それは勿論…』


笑ったままでいるからこそ恐ろしい……。

一つの可能性に冷や汗が伝うのを感じながら未

だに笑い続ける虧月に渇いた口で問うと、虧月

は静かに口を開いた。


自棄にゆっくりと錯覚する僅かな時にいつの間

にか緊張が張りつめて、心臓の音が自棄に大き

く響く……。





『遊ぶんだよ!いっぱいのほうが楽しいもん!』

「ッ……そ…だよね……」

にっこりと幼子のままに笑った虧月にいつの間

にか止めていた息を吐き出す。

安堵に全身が脱力するのが分かった……。


「危ないから駄目」

『えー…』

曲がりなりにも禍ツ神といったところか……。

子供の面に隠れたもう一つの面に初めて加州が

虧月に恐怖を抱いた瞬間だった……。

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不思議の国の有栖さん(プロフ) - 最高です (2021年1月15日 23時) (レス) id: 1031f2154f (このIDを非表示/違反報告)
紫羅那@龍蓮(プロフ) - 更新頑張ってください!めっちゃ好きです! (2020年3月11日 17時) (レス) id: 52a85e5aa6 (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - 羅維さん» 応援の御言葉ありがとうございます!!楽しみだと言っていただけて嬉しいです!最近中々更新ができませんが、なるべく早く更新できるように頑張ります! (2019年5月14日 16時) (レス) id: b4a1ce9c3e (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - 闇夜さん» ありがとうございます!!重症待機とは……!早く手入れという名の更新をせねばですね!(笑) 好きだと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります (2019年5月14日 16時) (レス) id: b4a1ce9c3e (このIDを非表示/違反報告)
羅維(プロフ) - 続き、スゴく楽しみです!応援してます! (2019年5月4日 12時) (レス) id: 11865369a3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朔櫻 実桜 | 作成日時:2019年3月25日 17時

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