【刀剣乱舞】禍ツ神の本丸

厄災十 ページ15

「一応聞くけど……どうしたの？」

『かくれんぼしよう！』

「だめ」

懇願を容易く切り捨てた加州に虧月が声を挙げ

る。

肩を落としてシュンと俯くその姿は大変愛らし

くはあるのだが……

こればかりは、新しい主に虧月をこの本丸に招

いた者として"何か"あったら困るのだ……。

そもそも、何も虧月の懇願を予想していなかっ

たわけではない。

好奇心旺盛、興味の赴くままに即行動、おまけ

に遊び事が大好きな虧月のことだ、此方の静止

などものともせず直ぐに部屋に籠っていられず

に飛び出すのが目に見えている。

それを5日間も部屋に閉じ込めることに成功した

のだ……今回の結果は良いほうなのだろう……。


……しかし、それも限界を迎えてきたらしい……。

加州と盈月からすれば、只でさえ自身に不幸を

寄せ付ける虧月を誰が敵と成りうるやも知れぬ

本丸を歩かせる訳にはいかないものなのだが、

その思いも虚しく外を練り歩くべく懇願する虧

月に最早頭を抱える他ない。

……それも、"刀"を手に虧月の部屋の周辺を練り

歩く者までいるのだ……警戒するのも仕方ないだ

ろう……。



そんな加州と盈月の気持ちなど露知らず、懸命

に懇願し体を揺さぶる虧月に加州は部屋に縛り

つけておくために持ってきた団子を落とさない

ように上げると、この場をどう乗りきるか考え

た。


強情な虧月のことだ……きっと、恐らく、言い聞かせるのに一筋縄ではいかないはずだ……。


真っ直ぐに見上げる虧月の瞳から目を反らすよ

うに盈月へと視線を移すと、虧月は加州の視線

の先にいる盈月を振り向いた。


『ねぇ、えーげつ！良いでしょ？』

「そうっすねー……」

『えーげつー、かみー』

一生懸命に懇願する虧月に目を反らし続ける加

州の唇が僅かに震える。

無垢なその瞳と可愛らしいその懇願に承諾に頷

きそうになる自分を必死に抑えて理性を保とう

と抗うが……そろそろ加州にも限界を迎えそうだ……。




そんな加州を知ってか知らずか……

盈月は降ろしていた腰を上げると、ゆったりと

した動作で加州と虧月に近寄ると、加州の手に

乗る団子へと手を伸ばし、それを持って見せび

らかすように虧月へ振ってみせた。

厄災十と一→←厄災九つ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す