【ヒロアカ】この個性は神にも届く【男主】

シヴァ神２４ ページ26

霧を抜け、視界が明るく開ける。ここは……ああ、広場か。


ふと相澤先生の姿が見えたので声をかけようとしたが、遮られた。その声は他でもない、会いたくて会いたくて止まなかった、大好きな兄の声。先生のことが一瞬にしてアウトオブ眼中になる。


「A、久しぶり。よく来たね」

『うん！あ、そういや兄さん痩せたでしょ？ご飯食べてる？』

「食べてるよ。１日３食しっかりと」

『じゃあ何で痩せてんのさ……。まあいいけど』

「あ、いいんだ」



心地よい空間だ。ここが戦場だとすら忘れてしまいそうになる。すぐそこで相澤先生がーー兄さんの言うところの有象無象と戦っている。
こちらは間もなく勝負は決するだろう。そうしたら、次は脳みそさんかな。


僕が元いた場所では13号さんと皆、それに僕を連れてきてくれた霧さんが対峙している。一触即発って感じだね。


そんな中で僕たち兄弟だけが戦っていなかった。客観的に見れば、ヴィランのリーダーとヒーローの卵。どう考えても戦うべき。……だけど、そうはしない。


だって僕らは兄弟だから。暗闇の中でお互いだけを頼りにしていた、愛し信じる兄弟。


今、道は違えてしまったけれど。


しかし僕らは血が繋がっている。


互いを大切に思っているからこそ、敵同士でも構わないのだ。


そっと、兄に抱き付く。ああ、兄は何にも変わっちゃいない。ヴィラン？だから何だと言うのだ。例えどんな立場にあろうが、僕に向ける優しさは本物だ。それでいいじゃないか。


指を１本抜かした状態で僕の頭に触れる。優しく、壊れ物を扱うように。その感触が懐かしくて、僕はさらに強く抱きしめた。


「痛いよ、A」

『……会いたかった。このくらい、いいでしょ』


頭上で「ふふっ」と笑う声が聞こえた。笑うな、と怒ったように返すと、軽く謝って僕を抱きしめてくれた。


これが僕らの兄弟愛。


兄さんはね、敵には厳しいし冷酷だけど、僕にはとっても優しくていい人なんだよ。


今だけは、何もかも忘れていたいな。

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