352、僅かな希望 ページ6
「私と会えて嬉しい…お前は確かにそう言っていたな。ならばこうして一生そばに置いてやると言っているんだ。それはお前だって望んでくれていることだろう」
ベルナルドはそう言って、Aからyesの返事を吐き出させるべくAの首に舌を這わせる。
「…っ」
Aは慣れない感触にゾクリとしながらも、歯をくいしばり必死に声を抑える。
…怖い。
こんな人…知らない。
私の知っているあなたは……
(優しくて素敵な笑顔で、私を受け入れてくれて…)
かつてのベルナルドを思い浮かべた途端、切ない気持ちが襲ってきた。
もうあの笑顔を見せてくれることはないのかと考えてしまって…。
「…ベ…」
口が自然に開く。
「…ベルナルド…さん…」
「…!」
無意識にポツリと、その名を呼んでいた。非常に小さく、震えた声で。
ベルナルドも、その声には反応を見せた。
その時何かがAの頰を伝っているのが分かった。
涙だ。
恐怖が溜まりに溜まって、とうとう溢れ出てしまったようだ。
「やめて…ください。お願いします…」
やめてなんて言ってやめてもらえたら苦労しない。けど、それでも私はまだこの人に僅かな希望を抱いているのかもしれない。
「あなたはこんなことをする人じゃない」
こんな状況でもまだそんな甘いこと言ってるなんて、本当に馬鹿だと思う。でも私はまだ完全には信じ切れていない。あなたが全く変わってしまったなんて。
「…お前は私のことを買い被り過ぎている」
ベルナルドはそんなことを言っているが、明らかに先程までの彼と様子が違う。
(…葛藤しているの?)
Aはふと、そう感じた。Aの涙を見た瞬間から、ベルナルドの動きがぴたりと止まっていたからだ。
彼にまだ良心があるのではないかと、Aはベルナルドへ僅かな希望をかけて言う。
「分かって下さい…こんな風に力ずくで何とかしようとしても、何でもかんでもあなたの望み通りにいくわけじゃないって」
「…どういう意味だ」
「あなたがどんなにひどいことをしても、私はオリオンには従いませんから」
Aがオリオンに従えば、みんなが悲しむ。今までどれだけたくさんの人に助けられてきたか分からないのに、恩を仇で返すようなことは絶対にしたくない。
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飛鳥 - いちいちパスワード認証がでるのですか?なぜですか? (2020年3月25日 22時) (レス) id: 5955d179f7 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 沙希子さん» あたたかいコメントありがとうございます!最近更新が遅れ気味で大変申し訳ございません。最終回に向けてこれからも更新を頑張っていくつもりですので楽しんでいただけると幸いです。 (2019年11月17日 10時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
沙希子(プロフ) - 更新焦らず頑張ってください!続き凄く気になります。 (2019年11月17日 6時) (レス) id: 03fe093666 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - そそそさん» コメントありがとうございます!1番ですか!?とても嬉しいです!ありがとうございます!!更新が大幅に遅れてしまい大変申し訳ございません。これからも頑張りますのでよろしくお願いします。 (2019年10月23日 18時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
そそそ(プロフ) - 今まで見たイナアレ小説の中で1番おもしろいです。更新楽しみにしています! (2019年10月23日 10時) (レス) id: 924231b153 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉 | 作成日時:2019年9月29日 21時