332、もう、いいや ページ36
「名前で呼んだ点は、気にしないで欲しい…」
真っ赤になったまま額に手を当てて言うタツヤ。あの時のことを恥じているようだ。
いつもは「西村さん」なのに「A」と呼んだあたり、あの時は相当慌てていたらしい。
でも、Aは。
「私は嬉しかったけど」
「…え?」
「心配してくれてるんだって思ったら、何だか嬉しくて。…もちろん地雷原に巻き込まれてんだからそんなこと言ってる場合じゃないことはわかってるけど」
仲間として、自分のことを心配してくれていたことがAにとってはありがたかったのだ。
「基山君の声が真っ先に聞こえた。ありがとう心配してくれて」
そう言われた途端、タツヤの鼓動が早くなった。
「…し、心配するに決まってるだろ…」
そう、心配するのが当たり前。
でも、自分の声がこの人に届いていた。それが何だか無性に嬉しかった。
「それと、擦り傷はまだ残ってるけど大したことないって言われたし、痛みもだいぶ引いたからもう心配しないで」
「…そっか…」
いつもの笑顔を向けられ、タツヤは心の底から安心した。
同時に、Aのその顔を見ていたら、今まで色んなことに悩んできた自分がばかばかしくなってきた。
__ああ。もう、いいや。
と、タツヤの中の誰かが言う。
その時たしかに、タツヤは何かから解き放たれた。
タツヤは観念したように手を伸ばし、Aの頭を引き寄せ、自分の胸元に持っていった。
今、タツヤに優しく抱きしめられている状態になった。
「…き、基山君…?」
あまりに突然のことにAは抵抗することすら忘れ呆然と、赤面することしかできなかった。
「…無事で良かった…」
と、タツヤの声はかすかに震えていた。
Aは「大袈裟だ」と言って茶化そうかと思ったが、今のタツヤを見ているととてもそんなこと言えなかった。
こんな基山君初めて見た、と内心驚いていた。
「…早くこんな傷消えるといいな」
一旦Aから離れ、傷だらけの顔を見て言った。
「……うん」
さっきから妙にAの心臓がうるさい。
(…これはあれかな?急に抱きしめられてビックリしたせいかな?)
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紅葉(プロフ) - 夜空さん» コメントありがとうございます!楽しみにしていただいてとても嬉しいです!これからも更新頑張ります! (2019年9月29日 11時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
夜空 - とても面白くて新しい更新を楽しみにしてます!タツヤの恋も応援したい!ヒロトの恋も応援したい!どうなるの〜汗 (2019年9月29日 2時) (レス) id: d246f2b775 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - ドルチェさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです!これからも更新頑張ります!! (2019年9月23日 12時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
ドルチェ - 紅葉さん,いつも楽しみにしてます!これからも拝読させて頂きます!頑張ってください! (2019年9月23日 12時) (レス) id: 697128a6e4 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - ルナさん» コメントありがとうございます!アツヤの登場でさまざまな人間関係が大きく変わっていく、ということをテーマに書いていく予定ですので、楽しんでいただけると幸いです。これからも頑張ります! (2019年9月14日 8時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅葉 | 作成日時:2019年9月8日 22時