253、証拠 ページ6
やっぱりフロイはあの時のこと、婚約だって誤解してたらしい…。
貴女「あ…あれは婚約したつもりじゃ…」
フロイ「君のお母さんも、僕達の結婚を認めてくれたんだよね」
誤解を解こうとしてる途中で遮らないでくれフロイよ…。
…って…
え？今何て？
貴女「…お母さんが？」
お母さんも私達の婚約を知ってるの？
それにしてはうちの母、私の恋愛事情にばかり首突っ込んでくるんだけど…
フロイ「それと、婚約の証拠もちゃんと持って来たんだ。Aが忘れたなんて言うから」
貴女「証拠？」
フロイは四つ折りの紙を取り出してきた。
フロイ「これ、覚えてない？」
貴女「…？」
手渡された紙を広げてみると…。
その紙の上の方には、子供ながらの字で「こんいんとどけ」と書かれていた。
…こんいんとどけ？
貴女「こ…婚姻届！？」
その下にはそれぞれの字でAとフロイの名前も書かれてある。
貴女「！」
その字を見た瞬間、一枚の紙に名前を書き合うまだ幼いAとフロイの姿が脳裏をよぎった。
…あ…
確かに、これを書いた記憶はある。
じゃあ、どういう経緯でこれを書くことになったんだっけ…。
Aが必死に当時のことを思い出そうとしていると、フロイがパッとその紙を取り上げた。
フロイ「…分かった？婚約は君も納得した上でしたことなんだよ」
どんなに昔のことでも約束は約束だからと、フロイはこの紙をずっと大切に持っていたらしい。
フロイ「僕だって今さら君以外の人と結婚するなんて考えられないから」
そう言いながら紙を丁寧に折りたたむフロイ。
フロイの言っていることは本心だと、Aは感じた。
フロイ「Aはどんなに昔の約束でも、ちゃんと守ってくれるよね？」
貴女「…フロイ…」
フロイの本気を目の当たりにして、Aは何と言っていいかわからなかった。
フロイ「……なんてね。今すぐ結婚しろって言ってるわけじゃないよ。僕達まだそんな年齢じゃないし」
貴女「…！」
先程までの真剣さとは一変、表情を緩ませたフロイ。
フロイ「これを婚姻届なんて言っても所詮は子供が書いたものだし。法的に見るとままごとのようなものだろうから、これを持っていたところで本当に結婚できるわけじゃないことはわかってる」
貴女「…」
フロイ「…でも、いつか全部現実になれば良いな…」
＿__君も、僕と一度でもそんな約束をしたってことだけは覚えておいて。
フロイは強く念を押した。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年8月23日 13時
