294、夢が叶えられて ページ47
貴女「ご…ごめんなさい…」
しゃくり上げて上手く言えないが、何とか自分の気持ちを伝えようとする。
貴女「…私…！あなたにずっと感謝していたんです…！！上手くいかなくて挫折しそうになっても、あなたの試合映像を見て、力をもらってて…！」
涙を手の甲で拭いながら必死に訴える。
クラリオも「ありがとう」と言いながらAを見守る。
貴女「だから…また一つ夢が叶えられて嬉しいです！」
クラリオ「…！」
涙でぐしゃぐしゃだが晴れやかな笑顔を向けられ、クラリオの心臓が音を立てた。
その光景を見ていた一同は思わず微笑んだ。つくしに至っては「良かったねAちゃん」と何度も呟きながら涙ぐんでいる。
スペインの者たちも、いつになく優しい目をしたクラリオを見て目を丸くしていた。
吉良「おい、いつまで話してんだ…」
一人、痺れを切らして2人の元へ向かおうとするヒロトを、タツヤは「待って」と止めた。
吉良「んだよ！」
基山「今は、そっとしといてやれ」
吉良「はあ！？」
基山「西村さん、あんなに嬉しそうなんだ。だから今だけは…な」
タツヤはクラリオを前に喜んでいるAを見て、どこか切なそうに笑っていた。
吉良「……ふん。あと1分経っても離れないようだったら無理矢理引き離すからな」
ヒロトも今だけは我慢して2人を見守ることにした。
吉良「…ああ、そうだ。お前には教えといてやる」
Aから目を離さないまま、タツヤに話しかけるヒロト。
吉良「俺、あいつのこと好きだから」
基山「！」
だからこれからも遠慮なくあいつに近づく。そう告白するヒロトの目は真剣そのものだった。
だがタツヤは今更それを本人から聞いたところで、「…うん、知ってたけど」としか言えなかった。
吉良「知ってたって何だよ！」
せっかく暴露してやったのに何だその反応は、と怒るヒロト。
…まあ、あのヒロトが恋心を自覚しただけでも大きな進歩なのかなとタツヤは感じた。
基山「…頑張れよ。応援してるから」
そう言うタツヤの表情は冴えない。
吉良「そりゃどうも。じゃあ俺も応援してやろうか」
基山「…え？」
吉良「お前にも好きな奴がいるなら、この俺が応援してやっても良いって言ってんだ」
基山「……」
…そんなことして後悔するのはお前なんだよヒロト。タツヤは心の中だけでそう呟いた。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年8月23日 13時
