289、未完成 ページ42
ここに来てまた失点してしまい、今のジャパンには余裕が無くなっていた。
野坂「日本は味方の能力を信頼するあまり、疲れや緊張から来るプレイの劣化を考慮できていない」
一星「はい。仲間のプレイを信じ過ぎてますね。スペインはそこに気づいた…」
趙金雲は言った。イナズマジャパンはかつての雷門中を見ているようだと。
一星「一番のウィークポイントは、パスを出す瞬間。その軌道は疲労によって、各々の選手がイメージするラインから大きくズレています」
野坂「今のジャパンに、一人一人の疲労を計算に入れてパスを出すスキルはない」
疲労困憊しているジャパンのメンバーを見渡して言った。
一星「相手がスペインでは、ゆるいパスだと逆効果ですしね」
野坂「となると、パスを出すのは僕か一星くんに集中すればいいのだけど、そういうわけにはいかないか…」
一星「ですね、これは困ったことになりました」
誰もが頭を抱える状況になった。
円堂「おーい、野坂！明日人！」
そんな時、Aたちの後ろでゴールを守っていた円堂が離れたところから二人を呼びつけた。
貴女「…？」
近くにいたAにも話の内容はよく聞こえた。
円堂「お前たちに相談があるんだ。こうなったら、日本の切り札を使うぞ」
切り札？
円堂「切り札というのはだな」
野坂「なるほど、あれですね」
円堂「え？」
野坂「分かりました。円堂さんがそうおっしゃるなら、やってみましょう」
野坂は焦っているのか、円堂の話を最後まで聞くことなく一人で納得した。
明日人も野坂の考えていることがわかったようで、「あれか！」と声を上げた。
円堂「おい！」
結局、野坂も明日人も勝手に解釈したまま戻って行ってしまった。本当に分かったのか、円堂は不安だった。
「あれ」ってもしかして、この前3人で練習してたラストリゾートのことかな？
ここに来てラストリゾートか…。でもあの技は未完成のはず…。本当に大丈夫かな。
「あれですか！？」作戦を伝えられた一星は驚いた。
一星「確かにあれは未完成ですが、かなりの威力を持っています。やってみる価値はあるとは思います。ですが…」
野坂「やってみよう。一か八かではあるが、最後に一度だけなら足への負担も大きくない。やってみる価値はある」
明日人「うん！やってみよう！」
灰崎「分かったよ、やりゃ良いんだろ！」
今のところ誰にも異論は無い。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年8月23日 13時
