265、怖いもの ページ18
ヒロトは飛行機の中で怒鳴ったことをずっと気にしていたようだった。
吉良「…悪かったな。お前は俺を心配してくれてただけだったのに」
貴女「……」
しおらしいヒロトなど新鮮すぎて、Aは思わず吹き出してしまった。
吉良「てめ、何笑ってんだよ！」
貴女「ご…ごめん」
あの時はやっぱり飛行機が怖かっただけみたい。
吉良「どうせカッコ悪いとか思ってんだろ！？」
貴女「別に思ってないよ。誰にだって怖いものはあるんだし」
吉良「…それフォローしてるつもりか？」
貴女「えっと…こういうの何て言うんだろ…ギャップ萌え？」
吉良「全然励ましになってねえからな！」
…よかった。だんだんいつも通りの私たちに戻ってきた気がする。
でも、私も謝らないと。
貴女「…私もごめん。壮行会で言ったこと」
＿_＿クラリオさん吉良君とは違って優しいんだもん！
…あれは流石に酷すぎたなって思ってた。
誰かと誰かを比べることほど、醜いことはない。
吉良「…別に気にしてねーよ。どうせ俺はクラリオとは違って優しくないからな。お前に嫌われるのも当然だよな」
拗ねたように顔を背ける吉良君。
やっぱりまだ根に持ってるじゃん。
…この際、自分の気持ちと今までの感謝をちゃんと伝えておこうかな。
貴女「…たしかに吉良君はいつも意地悪だけど、本当はいいやつってことはわかってるよ」
私もたくさん吉良君に助けられて来たから。
主に精神面で。
貴女「だから吉良君のこと、別に嫌いではないし…」
吉良「……俺がいいやつとかお前、本当アホだな」
貴女「あ！？」
皮肉を言いながらも、ヒロトの顔は緩んでいた。
吉良(……くそ…
嬉しいじゃねえか…)
嫌われてなくて良かった。そう思った途端ヒロトはほっと胸を撫で下ろした。
「…どうした？」突然黙り込んでしまったヒロトに異変を感じて首を傾げると、ヒロトははっと我に返った。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年8月23日 13時
