天使(仮)の人生は平穏無事とはいかない。4【オリオンの刻印】

181、言い慣れない ページ33

急に空腹感に襲われてきた。
さっきまで全然食べたい気分じゃなかったのに…

…基山君と話して元気貰ったのかな。


…よし食おう！せっかくのご馳走だもんね‼
ボヤボヤしてたら本当にゴーレムに全部食べられちゃう‼

どれを取ろうか迷っていると、誰かがこちらに駆け寄ってきた。

一星「A先輩！今までどこに行ってたんですか！」

貴女「一星君。…ちょっとね、外で涼んでて…」

一星「……タツヤさんと一緒にですか？」

貴女「そうそう」

一星「…俺は先輩のことずっと捜してたのに…」

タツヤと一緒だったことに憮然とする一星。

貴女「え、そうだったの？」

一星「…これ」

一星が差し出してきたのは、料理が綺麗に盛り付けてある皿だった。

一星「…先輩、さっきから何も食べてませんでしたよね」

知ってたんだ…

もしかして、これを渡すためにずっと待っててくれたとか？

一星「……心配しましたよ。珍しく何も食べないし、いつの間にかどこかへ行っちゃうし…」

貴女「ご、ごめん。でも私なら大丈夫だから」

一星「…それなら良いんです。これ、良かったらどうぞ」

Aの好物や栄養バランスを考えられた皿が渡される。

貴女「…あれ、私好きな食べ物教えたっけ？」

私の好きなものばかりある気がした。

一星「皆さんの好みは把握してますので」

えっ皆の好みを？凄いな！

貴女「ありがとう。何取っていいか迷ってたから助かった！」

一星「‼」

お礼を言われ、一星の顔が赤くなった。

一星「い、いいえ！」

これだけのことで舞い上がるなんて…自分ってチョロいな、一星はそう思った。

一星「…こぼしちゃダメですよ。ドレス白なんですから」

貴女「わ、分かってるよ」

とても後輩からされる忠告とは思えない。


一星「…その……す…」

貴女「？」

一星「…今の先輩すっごく可愛いですから‼汚したらもったいないですよ‼」

貴女「⁉」

言い慣れない「可愛い」を伝えることに緊張して声のボリュームを間違えた一星。

一星「…では、失礼します‼」

一星は返事を待たずにAの元から去っていった。


貴女「………びっくりした…」

いろんなドキドキが入り混じる。

…可愛い…かあ。

嬉しいけど…不意打ちで言われると心臓に悪いもんだな…




一星「…ああ緊張した…」

Aに見えない所で熱くなった顔を両手で必死に扇いだ。

でも、ようやくAに本音を伝えられたことでスッキリした一星だった。

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