天使(仮)の人生は平穏無事とはいかない。4【オリオンの刻印】

178、エスコート ページ30

基山「き、きっと皆も同じだよ。似合ってるって思ってると思うな」

恥ずかしさに耐えられなくなり、話題を変えたタツヤ。

基山「…もちろん、ヒロトもね。照れくさくて、ついあんなこと言ったんだと思う…」

貴女「そうかなあ…」

基山「うん」

実際みんながそう思ってるかどうかは別として…今のタツヤは思ってもないことは言ってない。

基山「…そのくらい、良く似合ってるよ」

貴女「…！」

基山「俺が保証する」

貴女「……」

基山「…だから、自信持って」

嘘も迷いも見えないタツヤの瞳を見ているうちに、Aの心情が変わってきた。

基山「…分かった？」

貴女「…う、うん。ありがと…」

ここまでされちゃ、タツヤを信じるしかない。


そう思ったら、何だか肩の荷が下りてくる感じがした。


貴女「…そろそろ戻ろうか！」

基山「足はもう大丈夫なの？」

貴女「うん！だいぶ痛みも消えたし」

基山「そっか…良かった」

するとタツヤが先に立ち上がり、手を差し伸べた。

基山「…はい」

貴女「……何？」

基山「…お手をどうぞ、姫」

貴女「…姫⁉」

…いや、姫はなえちゃんでしょ。

貴女「…い、いきなりどうしたの？」

基山「…君はいつでも危なっかしいからね。こうしてリードしてあげないと駄目でしょ」

…基山君まで私をそんな風に思ってるんだ。
複雑だなー。


基山「…だから…お願い。会場に戻るまでで良いから、俺に…」

タツヤは照れくささを全て取っ払って、言った。

基山「俺にエスコートさせて下さい」

貴女「…っ」

その真剣な表情に、胸がトクンと音を立てたのが分かった。

基山「…今だけは、俺を王子として見て欲しい」

…そんなキザなこと言えるの基山君くらいよ…


…ああもう。

…そんな顔されちゃ、断るに断れないでしょうが。

貴女「……はい」

そっと、Aの手をタツヤの手に重ねた。

基山「…ありがとう。西村さん」

タツヤは嬉しそうに笑った。

貴女(…な、何か調子狂う…)


外が暗くて良かったと思ったAとタツヤ。

今の自分の顔、絶対に真っ赤だから…





杏奈「あ、A。やっと戻って…あら？」

大谷「…えっ⁉どういう状況⁉」

皆が目にしたのは、タツヤに手を引かれて歩いてくるAの姿。

何があったんだろうと、見る者の想像を掻き立てた。

そんな絵に描いたような二人に見惚れる者もいれば…

吉良「…何してんだよ、あいつら…」

そんな二人を見て、動揺を隠せない者たちもいた。

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