【Free! シリーズ】短編集 (ページ4)

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意外とお似合いな二人（椎名旭）ページ4

純喫茶まろんにて

茜「はい、カプチーノね！」
千歳「ありがとうございます、茜さん」

旭の姉である茜はカウンター席に座る千歳の前にカプチーノが注がれているカップを置く

旭「姉ちゃん、俺のバナナシェイクはまだか？」
茜「あーはいはい。もう少し待ってなって」

千歳の隣に座る旭に茜は呆れた顔をした
彼女の腕の中には茜の子である月紫(つくし)がぐっすり眠っていた

茜「ごめんね、千歳ちゃん。月紫のこと任せちゃって」
千歳「いえいえ、大丈夫ですよ。いつも美味しいものを頂いてるので！」

千歳はニコリと笑う

旭「それにしても、月紫ぐっすり寝てるな。さっきまでギャーギャー泣いてたのが嘘のようだぜ」
茜「私だって驚いてるわよ。ずっと泣いてたのに千歳ちゃんが店に入って来た途端、泣きやんでそっちに手を伸ばしてるのだもの」

旭は眠っている月紫の寝顔を覗きこむ

旭「お前…何か持ってるのか？」
千歳「いや、持ってないから」

千歳は否定する

千歳「昔、両親が忙しい時に弟の面倒を見ていたから少し分かるだけだよ」
旭「なるほどな～。だから貴澄も手慣れているのか」
千歳「貴澄君凄いよね。顔が良くてスキンシップが多いだけかと思ったら、赤ちゃんのあやし方まで知ってるなんて。女子にモテるのが納得いくよ」
旭「お前、褒めてるつもりのようだけどさり気なく貶してる部分があるぞ」

旭は彼女の言葉にツッコむ

月紫「う～っ…」

突然、月紫がぐずり始める

千歳「あ～ごめんね。起こしちゃったかな？」

千歳は月紫をあやす

旭「千歳、今度は俺に貸してみろ」
千歳「え～。旭君、さっき泣かせてたじゃん」
旭「お、俺が泣かせたわけじゃねえよ！」
千歳「ふ～ん？」
旭「なんだよ！その顔は！」

旭と千歳の様子を見ていた茜は笑みを浮かべていた

茜「なんか千歳ちゃん、いいお母さんになりそうね」
千歳「え？」

茜の言葉に彼女はキョトンとする

千歳「私が、ですか？」
茜「ええ。旭は頼りない父親になりそうだけど」
旭「それどういう意味だよ姉ちゃん！」

旭は茜にムッとした

千歳「確かに。旭君っていざとなったら、焦って何もできなさそう」
旭「千歳まで姉ちゃんと同じこと言うのかよ！」
千歳「だって本当のことじゃん！」
旭「んだと～？！」

そして、しばらく二人の口げんかが始まる

茜(意外とこの二人、お似合いかもね)

茜は微笑みながら、バナナシェイクが入ったコップをそっと旭の手前に置いたのだった