君以外もう知らなくていい 4

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「取り分ける袋もないし、このまま家に行くね」
「あー……うん、わかった」


断られないように決定事項として言う。

拒否されるかとドキドキしたが、とりあえず了承してくれて胸を撫でおろした。





「コーヒーでいい？」
「ありがとう」


部屋に上がり定位置に座っても、北山の様子は変わらなかった。

それがまだ俺がいることに違和感を抱いてないと思っている気がして、ほっとする。


「仕事はどう？ 上手くいってる？」
「分かんないことも多いけど、なんとか」


そっかという北山は嬉しそうで、俺の為に恋人役を引き受けたんだと玉森が言っていたのを思い出す。


「北山は？ 最近なんか忙しそうじゃない？」


CMも前回と同じ出演者での続編が決まっているが、撮影はまだだ。


「あー……、うん」


もの凄く歯切れの悪い答えに、これは何かあると前のめりになる。


「なに？ なんか隠してる？」
「隠してるっていうか」
「ちゃんと言って」


語尾を強くすると困ったように眉尻を下げたが、そんな可愛い顔をしても逃がさない。


「今ちょっとインテリアの勉強してて、教えてもらったりもしてるんだよね」
「そんなに本格的に？ なんか新しい仕事でもあるの？」
「そうじゃないけど本格的にやりたくて、習う機会が丁度あったから」
「転職するつもりなの？」
「まだそれは分かんない。どっちにしろ経験が必要な仕事だし」


やっとインテリアも少し出来るようになったと喜んでいたが、まだそれだけを任せてもらえるようにはなっていないと話していた。
今の会社でも悪くない気もするが、突き詰めてやりたいんだったら他にも道はあるだろう。


それ自体に異論はないが、知らなかった自分と相談してくれていなかったことにショックを受けた。


「そんな大事なこと、なんで俺に言ってくれなかったの？」
「藤ヶ谷も忙しそうだったし」
「そうだとしても言って欲しかった」


ショックを受けたことを分かって欲しくて言うと、北山は一瞬黙ってから口を開いた。

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