星月夜 1

44 ページ44

　
　
　
「ん、ぁ……ふ……」


キスをしながら目を開けると、さっきまで青白かった顔が熱り閉じた目の端が赤く染まっている。

その顔だけでイキそうになって、ぐっと耐えた。


絶対におかしいって、こんなことしちゃいけないって思うのに止められない。


北山のシャツの中に手を入れる。


熱い体はまるで俺に触られるのを待っていたようだなんて、頭がおかしい。


「ん、ン」


びくりと体を震わせ、甘い声を漏らす。

拒む様子はない。

もしかして俺だと分かっていないのだろうかと考えた瞬間、感じたのは怒りだった。


俺じゃなくてもいいなんて、そんなこと。


なんでそんなことを考えるのか分からない。


だが北山が俺以外の奴に触れられるなんて許せないと思った。


「……北山……、俺が誰だかわかってる……？」


このままずっとキスしていたいと思った唇を離して問いかけると、北山は甘く息を吐き出してから融けそうな目で俺を見た。


「…………ふじがや」


甘い声が鼓膜に響く。



ずっとこの声に名前を呼ばれたかった。



出会ってから何度だって呼ばれてきたはずなのに、何故かそう思った。


再び近づいてくる顔に瞼を閉じると、唇に感じた痛み。


「……痛ッ」


驚いて目を開けると、北山は自分の唇についた血を真っ赤な舌でぺろりと舐め上げた。


その景色に頭をガツンと殴られたような衝撃が走る。


「……ふじがや……もっと……」


そう言って微笑む北山は、壮絶なほど美しかった。


空気に色が付いて見えるくらい、妖艶さを纏っている。



なんだか頭が痛い。甘い香りにくらくらする。



北山の舌が伸び、俺の唇を舐める。
そのまま噛まれた場所に、ちゅうっと吸い付いてきた。


「……おいしい」


そう言って厚い唇で俺の上唇を挟むと、更にちゅうちゅうと吸い付いてくる。



我慢出来なくなって、北山の肩をベッドに押し付け乗り上げた。


それでも北山は俺を見つめただけだった。

45→←43

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す