第37話 ページ39
桜乃side
「昨日おばあちゃんが言ってた事が気になって、あの、何かあったんですか?」
そう言葉にした途端に東さんが振っていたラケットは真っ直ぐ飛んでいきネットにぶつかった。
コートに落ちてカランカランと音をたてる白いラケットは少しすると動かなくなる。
思ってもみなかった東さんの反応に呆然としていると、彼はラケットを拾いながら見たこともない怖い顔をしていた。
私やらかしちゃったのかもしれない。
主人公side
桜乃ちゃんからの言葉に、ラケットが飛んだ。
情けねぇことに動揺して手からすっぽ抜けたラケットはネットにぶつかってコートに落ちた。
ババァ、何言いやがった。
昨日の今日だから何かしら聞かれると思っていたがこんな直球だとは。
ラケットを飛ばした恥ずかしさと、桜乃ちゃんに嫌われたかもしれないという感情が渦巻いて顔が強張る。
ラケットを拾いながら、なんて言おうか頭をフル回転させ考える。変に誤魔化しても嫌われるくらいなら正直に言って嫌われるのがまだいいだろう。
嫌悪の表情されたら泣く自信しかない。
ゆっくりと彼女の方を向けば何故か涙を浮かべる桜乃ちゃんがいた。
「あ……っ。ご、ごめん、なさ……っ」
え?なんで泣いてるん?
俺の方が泣きてぇくらいなのに。
思ってもいなかった表情と彼女からの言葉に色々考えすぎた俺の脳内変換がバグる。
あの子は優しい子だから、ババァから聞いたことで俺の為に泣いているのかもしれない、と。
そして遂に俺の理性が抑えられなくなる。
自分の為に泣いてくれてるんだと思うと、嬉しさの余り思わず彼女に手が伸びた。
びくりと肩を震わせる桜乃ちゃんの華奢な身体を壊れないように抱きしめる。
腕の中にある温かい体温と、彼女の甘い香りに、身体中の熱が上がった。
「桜乃ちゃんが泣くんじゃねぇ、謝んな」
「え……?」
「ババァから聞いて幻滅したろ?
馬鹿みてぇに無理な練習で部員を故障させた野郎だなんて」
「ふぇ?あ、あの!
幻滅って……、無理な練習で、故障って?
そ、それよりも、なんで抱きしめて……!?」
腕の中から聞こえる声に、俺はとんでもない勘違いをしていたのではないかと気付かされる。
桜乃ちゃんは何も知らない様子。
俺が勝手に勘違いをして自爆してるようだ。
「……、悪りぃ、もうちょいこのままでいい?」
「え?えぇ!?は、恥ずかしいです!」
俺の方が恥ずかしい。

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バンビ(プロフ) - 猫好きさん» ありがとうございます。更新がゆっくりになってしまっていますが、続編をポチポチと作成していますのでそちらも続けて読んでいただけるように頑張らせて頂きます。 (2020年9月4日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
猫好き(プロフ) - とても面白いです!続きが楽しみなので、これからも更新頑張ってください! (2020年9月3日 18時) (レス) id: 9581fd09d5 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - わんにゃんさん» ありがとうございます。中々更新できず申し訳ありません!!できるだけ早く更新できるよう頑張らせて頂きます。 (2020年7月2日 21時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
わんにゃん - とても面白くてこの作品大好きで応援しています!頑張ってください、楽しみにまってます!! (2020年6月30日 18時) (レス) id: 6ebda506cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年1月2日 17時