第137話 ページ44
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スマホのカメラを起動して、シャッター音を消す設定にする。
鮮明さを失わない程度にズームして、シャッターを切る。
「撮れた……！」
「お、見してみ！」
ヒソヒソと話しながら、二人でピッピの写真の可愛さを共有する。
「あとで博士にも送ってやれよ、喜ぶと思うぜ」
「そうします」
「よし、んじゃあ次は上手いことオレたちも写り込ませたいな」
「そんなことできますかね……？」
「俺が撮ろうか？」
「それじゃあお願いします」
グリーンにスマホを渡し、操作を説明する。
「っし、じゃあちょっとそっち寄ってくれ……」
ピッピたちに見つからない程度に移動して、上手く撮影範囲内に入れるように試行錯誤する。
「……ちょっと見切れるな。しょうがねえ、もう少しオレの方寄れるか」
「っ、はい、こんな感じですか……？」
ほぼほぼゼロ距離まで近づいたので、Aの表情はガチガチに緊張している。
「……ふふっ、お前緊張しすぎだろ」
「いや、だって……だって……」
「はいはい、揶揄って悪かったよ。ちょっとピッピの方に視線向けといて、撮影の瞬間だけカメラ目線にすればいいと思うぜ」
「はい……」
「んじゃ、いくぞ……3、2、1」
シャッター音が響くことなく撮影されたその写真を確認してみると、心底楽しそうなグリーンと、若干硬い笑顔のA、そして満月とピッピが写っている。
「あとでこれ送ってくれよ、待ち受けにするわ」
「しなくていいです……」
「まあまあ。さて、写真も撮ったことだし、次は限界までピッピたちに近づいてみるか」
「えっ、大丈夫なんですか」
「あそこにある岩まで移動してみようぜ」
確かに、向こうにも二人が隠れることができそうな岩がある。
「気づかれないように、そーっと、な……」
抜き足差し足忍び足、足音を立てないように移動する。
あと少しで岩に到着する、という時だった。
履き慣れない靴を履いて普段とは違う歩き方をしていたのが原因で、Aは不意にバランスを崩してしまった。
「わっ……！？」
「大丈夫か！？」
グリーンが支えてくれたおかげで転倒は免れたものの、大きな声を出してしまったせいで、ピッピたちがこちらに気付いてしまった。
「「あ……」」
ピッピたちはお互いに合図しあって「人間に見られた」という状況を共有するや否や、ものすごい勢いで逃げて行ってしまう。
そんな中、1匹だけ足が遅いピッピがいて、途中で立ち止まる。
「「……？」」
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作者名：リトルポム | 作成日時：2022年8月3日 23時
