３･少女 ページ5
竹で編まれた扉を開く。部屋の中は質素な造りで、狭い部屋に椅子が一つ置かれているだけ。
それから少女がひとり。
褐色の肌。二つに結った淡い青緑色の髪。中々に愛らしい顔立ちの中には、何の感情も浮かんでいない。
｢……あなたは｣
｢こんばんは。ごめんね、ノックも無しに｣
澄んだ、可愛らしい無機質な声だ。その質問には答えずに私は微笑む。そして少女の傍らの窓辺に寄りかかって外を眺めた。
｢ここ、良い眺めでしょ。きみの島もよく見える｣
良い眺めとは云ったものの、窓から見えるのは砂と空と、それから少女の居た流れ島だけだ。
夜空も相まって確かにきれいな眺めだけど、退屈を紛らわすには少し物足りない。私ならすぐに飽きる。
きれいなモノは好きだ。でも私はきれいなモノよりも混沌や異質を好む。理由は何だか親近感を覚えるから。
そう云う意味も含め、私は体内モグラの少年少女を好ましく思っている。
尤も、向こうはそうは思っていないだろうけど。
｢扉の外の見張りはどうしたの｣
再び少女が訊ねる。私の正体についての追及は諦めたらしい。
多分、私がこの島で一番偉い人間だろうとはたまた住民その１だろうと、どうでも良いのだろう。
私も同じだ。この会話にお互いが何者であるかなんて、埃ほどの意味も無い。
それでも二度も無視するのは忍びないので、私は今度はきちんと答えてあげる事にした。
｢殺したよ｣
｢…………｣
｢ふふふ、冗談だよ。きみって本当に心が無いんだね｣
"心が無い"の部分でぴくりと少女が反応を示す。
その無表情が少しでも崩れる様を期待したのだけど、少女は変わらず無表情。残念。
因みに見張りは眠そうにしていたので、私が交代を申し出たのだ。赤い服を着た快活そうな少女。名前は……何だったか。
私が物思いにふけっていると、少女は顔を俯かせた。
｢私を……あの船に戻して｣
──不思議だ。
彼女には感情が無い筈なのに、その声は何かを圧し殺したような響きを持っていた。
何はともあれ、少女の頼みを聞き入れる事は出来ないだろう。何故ならばあの島への渡航は禁じられているのだから。
それは今、ここに立っているのが私でなければの話だが。
そして私は答えた。
｢──いいよ。連れていってあげる｣
少女が弾かれたように顔を上げる。私は彼女が何か云う前に付け加えた。囁くように言葉を紡ぐ。
｢その代わり──｣
｢案内して欲しいの。──魂形(ヌース)に｣
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猫目 - 今更ながらコメント失礼します！同じく私もシュアン推しなので見つけたときめっちゃテンション上がりました！見ていらっしゃるかは分かりませんんが更新応援しております(^^) (2019年3月26日 20時) (
レス) id: 619380b1ab (このIDを非表示/違反報告)
りぃふ - はじめまして。今更コメント失礼します！私はクジ砂中でシュアンがとても好きなので、この小説を見つけた時はすごく嬉しかったです！このお話のおかげで今だいぶシュアン沼にハマってます…笑お忙しいとは思いますが、更新楽しみに待っています。(*^^*) (2018年6月24日 19時) (レス) id: f3d7bfc71d (このIDを非表示/違反報告)
なつみん - るりさん» ありがとうございます！同士嬉しいです！最近滞り気味ですが、時間を見付けて更新します！ (2018年2月20日 17時) (レス) id: 1a2989d09e (このIDを非表示/違反報告)
るり - 初めまして！私も団長さんが好きです！とても良い設定、話で好きになりました。これからもがんばってください続き待ってます (2018年2月16日 17時) (レス) id: 1a80d02d72 (このIDを非表示/違反報告)
なつみん - 裕貴さん» 裕貴さん、はじめまして！私も団長さんが一番好きなので、そう言って頂けると嬉しいです。皆様のコメントを励みに、これからも頑張ろうと思いますので、どうぞよろしくお願いします！コメントありがとうございました！ (2017年12月22日 6時) (レス) id: 1a2989d09e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なつみん | 作成日時：2017年12月17日 16時
